取引先は「献立注文画面」で数を入力するだけ

アラジンECの導入により、出荷依頼や請求、注文変更などにかかる作業工数が40%以上削減されたほか、売上高も約3割増加したという

 MY PANTRY事業におけるアラジンECの活用法について紹介しよう。調理済み食材は「献立」と呼ばれる1カ月ごとの「献立表」に基づき提供されており、クライアントである高齢者施設の担当者はアラジンECのカレンダー形式の「献立注文画面」から、朝食・昼食・夕食のそれぞれについて、必要な食事数を入力する。これをHITOWAフードサービスの担当者が取りまとめて問屋に出荷依頼データを送付すると、各施設に日々の献立食材が配送される仕組みだ。

 高齢者の中には、特定の食材に対して健康上の禁忌やアレルギーを持つ人も少なくない。アラジンECでは「禁食」を事前に登録しておけば、注文画面にフラグが立ち、代わりのメニューを表示してくれる。献立の商品以外にお米・パン・みそ・おやつ、牛乳やケチャップなどの高齢者施設の食事提供で必要な全ての食材を単品としても取り扱っており、注文の頻度は基本的に毎日だ。

 本格稼働からわずか1年が経過したところだが、導入効果は顕著だ。メールやFAXで注文を受けていた二次卸事業の当時と比べて、出荷依頼や請求、注文変更などにかかる作業工数が40%以上も削減されたほか、売上高も約3割増加した。なぜ3割もの売り上げアップが実現したのか。

「手作業の入力がなくなったことで余剰時間が生まれ、既存のお客さまへのアフターフォローや、新しい食品会社さまと一緒に商品開発や販促企画に取り組めるようになりました。さらに、以前までは決まったご注文を頂くのみでしたが、EC画面上で単品商品もご覧いただけることから、“ついで買い”の促進にもなっています。既存と新規の双方のお客さまへの販売額が増えたことが大きな要因です」と篠崎氏は打ち明ける。 

 一方、野村氏は「右肩上がりで成長していることは間違いありませんが、ゼロベースからのスタートであり、当社全体の売上高に占める食材販売事業の割合はまだ数%にすぎません」と分析した上で、「調理済み食材の使用は調理スタッフの定着や採用難の環境下における社会の要請でもあり、冷凍食品の製造技術は格段に向上していることから、ニーズは確実に増えています。部門責任者としては、5年後には年間20億円規模のビジネスに育てていきたいですし、アラジンECの導入によって、今後の顧客増にも耐え得る基盤はできたと実感しています」と意気込みを示す。

BtoB EC・Web受発注システム「アラジンEC」で構築した、「MY PANTRY」の注文画面
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新商品の開発に合わせてシステムの改修も進行中

MY PANTRY事業では多種多様な食材を取り扱う。「どれだけ注文しやすい仕組みにするか」が肝要

 22年3月上旬、介護施設向けサービスを対象とした大規模展示会が東京・江東区で開催された。HITOWAフードサービスも初出展し、MY PANTRYの献立試食やサービス紹介などを行った。「当社が食材販売事業を始めていることをこれまで大々的にうたっていなかっただけに、同業者をはじめ来場者の方々に、専用のECサイトで注文できる仕組みまで整えているという驚きを与えながらアピールできたことは、大きな成果でした」と嘉村氏は展示会の様子を語る。

 実際の利用者である施設担当者からの評判も良好で、使いながら慣れていく人が多いという。「高齢者福祉施設の担当者の中には、パソコンやキーボード操作に苦手意識があり、ウェブよりも紙で注文した方が楽だと考える方が多いのも事実です。そうした方たちにとって、どれだけ注文しやすい仕組みにするかは、当社が持つウェブ受注システムの経験とノウハウを生かすことができましたし、HITOWAフードサービスさまからも取引先の利用者特性などについてヒントを頂きながらできたMY PANTRYのサイトは、開発者である当社としても一緒に創り上げたサイトとして思い入れがあります」とアイルの富士氏は言う。

 アラジンECのさらなる活用に向けて、すでに改修のプロジェクトがスタートしている。商品開発の一環として、例えば、おやつ用の食材を単品ではなく、1週間分をセットで提供し、ワンクリックで注文できる仕組みも搭載する。また、公園散策用のお弁当セットなど「行事食」の開発も予定している。

「イメージでお伝えしたことをきちんとご理解いただき、私にも分かるように毎回、資料を作成してくださるアイルさんには、感謝しかありません。さらなるユーザビリティーの向上に向けて、献立注文画面のカスタマイズなど、いろいろお願いするかと思いますが、ぜひご協力いただきたいです」と語る篠崎氏。今後はアラジンオフィスの売り上げ集計データを活用して、マーケティング活動にも注力していきたいという。

「コストや時間など制約がある中でアイルさんにはいいものを作っていただきました、というのがチーム全体の感想です。システムの使いやすさもさることながら、アイルさんの企業姿勢やメンバーの方々の寄り添い方はものすごく心強いと感じています。ますますタッグを強固にし、これからも一緒に歩んでいただきたい」と訴える野村氏。目指すは全国展開。毎年、利用施設を倍々で増やし、MY PANTRY事業を主力の給食受託と肩を並べるまでに成長させたいと意欲に燃える。

 アイルの富士氏も「MY PANTRY事業の急成長を、システム面でしっかりとサポートしていきたい」と応えて、締めくくった。

●問い合わせ先
株式会社 アイル
〒105-0011 東京都港区芝公園2-6-3
TEL:0120-356-932
MAIL:webmarketing@ill.co.jp
URL:https://www.ill.co.jp
アラジンEC:https://aladdin-ec.jp
MY PANTRY:https://hitowa-mypantry.com/