東京・六本木のHITOWAフードサービスにて。左から野村一夫氏、篠崎周寿子氏、嘉村浩氏

将来の業容拡大を見据えるなら、新規事業とはいえ、立ち上げ当初からデジタルやITシステムをうまく使って“仕組み化”しておくことが重要だ。人材難が指摘される労働集約型の業界においては特にそう。給食受託を主業とするHITOWAフードサービスは、食材販売事業のスタートに合わせて、アイルのBtoB EC・Web受発注システム「アラジンEC」を導入。受発注にかかる作業効率を飛躍的に高めて、売り上げを順調に伸ばしている。 “仕組み化”のメリットを関係者に聞いた。

高齢者施設に調理済み食材を販売する新規事業

給食受託業務に加えて、2021年に「MY PANTRY」事業をスタート

 今年、創業60周年を迎えるHITOWAフードサービスは、高齢者福祉施設や学校、保育園・幼稚園、社員食堂などに調理スタッフを派遣して、手作りで食事を提供する「給食受託」を主な業務としている。2021年4月には、高齢者施設向けに調理済み食材を販売する「MY PANTRY(マイパントリー)」事業を新たにスタートさせた。

「創業以来、給食サービスをメインに事業を展開してきましたが、コロナ禍以前から調理スタッフの獲得と定着が業界内では大きな課題となっていました。その解決策の一つとして、人を派遣するのではなく、調理済みの食材をお届けするというビジネスを新たな柱に育てるべく、MY PANTRYブランドを立ち上げました」。同社代表取締役社長の嘉村浩氏はそう口火を切った。

HITOWAフードサービス 代表取締役社長 嘉村浩氏

 人に依存しないビジネスモデルで勝ち得た収益を受託事業の調理スタッフの待遇改善に回していけば、優秀な人材が長く定着し、その結果クライアント施設にも評価され、さらなる案件の獲得にもつながる――。MY PANTRY事業の立ち上げには、そんな狙いもあったという。

 調理済み食材を販売する経験は、実はこれまでもあった。あるメーカーの販売代理店として二次卸事業を15年から手掛けており、当時は顧客施設からメールやFAXで届いた注文内容をメーカーの専用EC(電子商取引)サイトに同社のスタッフが手入力していた。