まず何よりも大事なのが「管理組合の懐具合」および「理事会の運営思想」を確認することです。理事会作成の書面でこの二つが分かるのは、毎年の通常総会の議案書しかありません。できれば2~3年分の過去の総会の議案書の第1号議案と予算案、それに長期修繕計画書と資金計画書の最新版はチェックしておきましょう。
管理会社は、マンションの購入希望者に対して管理重要事項調査の開示が義務付けられています。そこには修繕積立金の残高や、滞納者の有無や滞納金額などの情報が入っています。ただ、総会議案書には開示義務はありません。議案書を見せてくれないマンションは買わない、と割り切るのも一つの手です。外部に見せたくない情報があるのかもしれませんから。
議案書は毎年出るもので、管理組合の「癖」が表れやすい資料でもあります。実は「管理組合自身が何を議決しているか分かっていない」とか、ひどい場合は標準管理規約(国土交通省が定めているマンション管理組合の管理規約のガイドライン)違反の議案などもしばしば出てきます。つまり、管理組合の「レベル感」を読み解くこともできるのです。
さらに議案書からは、管理組合の「お金の使い方の姿勢」も読めます。ケチケチが大事という人が仕切っていると、少額の出費項目をいちいち議案にして総会に諮る、ということになりがちです。無駄遣いは論外ですが、「管理にとにかくおカネをかけません」などと、節約ばかりを重視する人が多数いるマンションは、先行きヤバいかもしれません。……実は意外とこれが多いのがタワマンの理事会です。
加えて重要なのが長期修繕計画書です。
計画書を見てその良しあしを判断するのは素人にはなかなか難しいのですが、不動産取引サイトの「オウチーノ」を利用する手があります。ここでは、国交省が設定した積立金ガイドラインの下限を超えている積立金徴収を行っているマンションが検索できるようになっています。ちなみにこれに「合格」するマンションは全国で22%しかないということが分かっています。
もっとも、修繕積立金の水準にしても滞納率にしても、どこが危険ラインなのかを資料だけを見て判断するのは難しいでしょう。本特集の#1、#4などでも何回か登場していますが、管理格付け制度が今年から始まりました。管理の専門知識がなくても容易に管理状態が判断できる制度でもあり、本来はこの制度の普及を待ちたいところではあります。
内見などで判断できることもたくさんあります。「マンションが売りに出たときにいかに高く売れるか」を意識できている理事会かどうかを判断するには、外構部からその部屋の玄関に着くまでの間に「萎える」ものがないか、チェックするのがいいでしょう。
中古マンションがより高く買われるためには古びていないように見えなければならないわけです。専有部分はリフォームをすればいいですが、玄関から一歩外に出ると、そこから先は全て共用部分で管理組合が意識を配らなければきれいに維持できないわけです。
駐輪場、ごみ置き場、掲示板などの他にも、エレベーターの内側によれよれのパンチカーペットが残っていないかなどもチェックポイントになります(これも高級を売りにしているマンションに意外と多いです……汗)。
私のお勧めは「植栽が美しく保たれているか」を見ることです。植栽の維持は、毎年適切なコストをかけて長年行わなければできません。累積の維持費は数千万円にもなるかと思いますが、長期間にわたって毎年そこにケチらず投資をしているかどうか。都心のビンテージマンションで植栽が枯れている所はまずありません。
さて、読者の中には管理組合の理事の方もいらっしゃるかと思います。最近組合理事の心配・関心事項になっていることにもお答えしましょう。
まず「管理会社が突然いなくなった」という昨今一般紙でも話題になる問題です。
そもそも、管理組合と管理会社の間に信頼関係があれば報道のような「3カ月前に突然解約」などとはならず、1年とか半年前に条件変更の相談をしてくるものです。3カ月前にどう考えても管理組合がのめない条件を突き付けてくるのは「絶対にここから抜ける」と管理会社に決意させる「過去の経緯」があったと考えるのが自然です。管理会社に対して極端に敵対的な態度を管理組合が取り続けてフロントマンが病んだとか、カネにならない仕事を強要し続けてきたなど、なんらかの理由があるはずなのです。
昨今は大手財閥系管理会社でも管理受託戸数を軒並み減らしています。つまり各社とも採算が取れない管理組合を無理してキープせず、切るということをしているわけ です。
さて、このような状況で、いかに良い管理会社を選ぶべきでしょうか。「ここに頼めば100パーセント安心、などという管理会社などはない」のが答えです。よほど規模の小さな企業でない限り、どの会社も大差はありません。ポイントは「いかにいい担当者に来てもらうか」に尽きます。
当たり前ですが管理会社側の人材も一流からカスまでさまざまなレベルの人がいます。「一流のフロントマンをあのマンションには投入しなければならない」といかに判断されるようになるか、です。いい提案を持って行ったのに相見積もりをしろとはねつけられたとか、何も決まらない、決められずぐだぐだしているマンションには一流は来ません。担当フロントマンがC級の人だったら、それは自分たちの管理組合がC級であるせいなのだ、と思うべきです。
そもそも、多くの管理組合で「管理会社との直接の交渉」をしているとは言い難い現状があります。管理組合が通常コンタクトを取っているフロントマンには決裁権限を持っていない人がほとんどです。管理人に至っては社員ですらない場合も多いのです。私のマンションでは、管理会社が契約形態や管理委託料の変更などの重要議案を持ってくるときは、理事長や副理事長とマンション管理士が一緒になって支店長クラス以上の直接の決裁権限を持った人物との直接面談を要求しています。本来対等な関係や交渉というのはそのくらいのことが必要だと思います。
最近話題になってきた第三者管理方式についても触れましょう。私は、これは「令和の新管理方式であり、日本のマンション管理がグローバルスタンダードに近づくための一歩」だと思っています。第三者管理方式は、管理者とそこから発注のいく管理会社と修繕工事会社が同じ管理会社内にいるという方式であることから、利益相反の問題がたびたび指摘されますが、逆に「ある程度はぼられても仕方ない」という思い切りもそのうち必要になってくるのかもしれません。
先ほど「おカネをかけてもいいから、次にマンションを高く売れるようにする」ための管理の重要性に触れましたが、今後は「おカネをかけてもいいから理事にただ働きをさせない管理」も求められるようになるのかもしれません。いずれにしても、管理の在り方が今後大きく変わる局面に、私たちはいま直面しているといえるでしょう。
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