10年後には高専が公正に評価される社会に
同社にはもう一つ、特徴的なコンテンツがある。19年6月に開設した高専(高等専門学校)出身者の転職支援に特化したサイトだ。これは、各カウンセラーが企業とやりとりする中で、技術系現場で強いニーズがあるにもかかわらず、大卒や院卒者の陰になり、高専出身者の存在感が薄いのではないかという現状認識に端を発する。
自らも函館高専出身で転職カウンセラーの松浦和司氏は、「ネットで検索してみても、出てくるのは大卒者向けの案件ばかり。高専出身者はどうしたらいいか分からない」という声が同社に以前から寄せられていたことを明かしてくれた。また髙橋氏は、「そもそも高専の世間での認知度自体が低い。企業の人事部でも文系出身者が多いので、高専のことを深く知らないのです」と分析する。
そうかもしれない。世間一般の認識といえば、せいぜい「ロボコン(ロボットコンテスト)で競い合っている学校」程度ではないだろうか。
少し解説すると、高専は技術者養成の高等教育機関。入学対象は中学校卒業者。修業年限は本科5年、専攻科2年。目下全国に57(国立51校、公立3校、私立3校)の高専がある。特筆すべきは、教員の指導力と卒業生のレベルの高さだ。
「有名大学でも成績上位者は、高専出身者であることが多いです。東大工学部の各学科を主席で卒業した高専出身者が話題になることが度々ありますね」。保坂氏は東京工業大学の修士課程出身だが、在学中は高専出身の同級生の優秀さに何度も舌を巻いたという。高専は、そもそも文部科学省が定める「学習指導要領」の制約を受けない高等教育機関なので、高校の教諭とは指導者の質からして違う。博士が指導者であり、独自のテキストで、15歳から高度な教育を授けてくれるのだ。
「実験も15歳から本格的に行い、毎週のようにレポートを提出させられました」。松浦氏も、実践的な学びの日々を振り返る。
STEM教育が叫ばれる昨今、高専に対する過小評価は日本社会全体にとって大きな損失なのかもしれない。最後に松浦氏は、「世間の高専に対する理解を深め、10年後には、高専出身者が公正に評価される社会にしたい」と語ってくれた。
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