経営者の発言が強い
ピラミッド型の組織の場合は?

 しかし、経営者の鶴の一声を待っている上意下達型のピラミッド型組織は、自律型組織を目指すコーチングにはなじまないように見える。

 桜庭氏は「コーチング、ティーチング、カウンセリング、コンサルティングは、そのうちの一つしか導入できないということではないので、シチュエーションに合わせて必要な対話を選べばいいのです」とアドバイスする。

 また「働くことを、数字を上げるためだけの生業(なりわい)にしてしまっては、人の心は動かせない時代に入っています」と桜庭氏は分析する。企業が目指すゴールやKGI(重要目標達成指標)、KPI(重要業績評価指標)は営利を追求する以上必要なことだが、

「それだけでは組織に属する人たちが手を繋ぎ共創し持続的に成長していくことができない。人が感動するのは存在意義や志、理念、価値観です。それを原動力として社員が力を発揮して前に進んでいくことをパーパス経営とするなら、当社のミッションである『働く人と組織の志をつなげともに成長できる世の中に』を実践する中で、コーチングを通じて、顧客、組織、経営者の『三方良し』の企業をたくさん増やしていきたいと考えています」。

「土の部分にあたるリーダー、マネジャーが人材に栄養を与えることで、しっかりとした幹に成長します。この養分を多く含んだ土を意識して作っていくことが重要です」(桜庭氏)

 刻々と変化する企業環境に対応するため、自律した組織づくりを目指す企業は多い。コーチングは、経営者や管理職を旧来の成功体験から解き放ち、新しい視点や気付きを与え、可能性を広げ、自律した部下を育てる力を与える最適なコンセプトといえそうだ。

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