日本企業共通のアジェンダである「働き方改革」「デジタル化」「DX」に加え、最近では「リスキリング」や「自律型人材」といった聞き慣れない言葉が加わった。「企業はいま、人材戦略の見直しを求められている」と話すのは、ベネッセコーポレーション社会人教育事業部(Udemy日本事業責任者)の飯田智紀氏だ。いま企業の人材戦略に、大きな地殻変動が起こっている。
リスキリングは「学び直し」ではなく「学び足し」
昨今日本企業において、「リスキリング」に対する意識の高まりが注目されている。リスキリングとは、広義に「新しい知識・スキルの獲得」を指す言葉だ。こう言うと「従来用いてきた『スキルアップ』と何が違うのか」という声が聞こえてきそうだ。
この聞き慣れないリスキリングという言葉を理解するには、その背景にあるコロナの影響を意識する必要がある。未曽有の感染症拡大により、世界中でリモートワークが拡大し、それに合わせてデジタライゼーションも世界同時多発的に加速、多くの業務プロセスのオートメーション(自動化)も進んでいる。
世界経済フォーラム「仕事の未来レポート2020」(Future of Jobs Report 2020)によれば、「これから8500万の仕事が失われ、新たに9700万の仕事が生まれてくる」と記されている。同レポートを見ると、2025年までに需要の高まる仕事の上位には、「データサイエンス・分析」「AI・機械学習」「ビッグデータ」「デジタルマーケティング」「プロセス自動化」などDX(デジタル・トランスフォーメーション)に直結する職種がずらりと並んでおり、「現在働く人の半数が、2025年までにリスキリングする必要がある」と示唆している。これは、コロナとデジタルによって、業務のポートフォリオが劇的に入れ替わり、これまでの武器だけでは、企業もそこで働く個人も戦えなくなっていることを示しているといえる。
「そうした環境の変化において『リスキリング』は、経営課題解決の打ち手として待ったなしの状態」と話すのは、ベネッセコーポレーション社会人教育事業部(Udemy日本事業責任者)・飯田智紀氏だ。
社会人教育事業部(Udemy日本事業責任者)
飯田智紀氏
飯田氏はリスキリングの意義をこう語る。「リスキリングとは『実践的・実用的なスキル・知識(特にデジタル関連)』を学ぶことを指します。これにより、みずからが所属する組織で価値を発揮し続ける力をつけることができます」
また、スキルアップとの違いについて、スキルアップが「AからA’への変化」だとすれば、リスキリングは「AからA’+αへの変化」だと説明する。すなわち、これまでのスキルを磨くことに加え、新しいスキル・知識を身につける点が異なるという。リスキリングを「学び直すこと」と理解している傾向もあるが、飯田氏は「学び足すこと」だと定義する。