1990年代から学校改革に取り組んできた海城。「新しい人間力」「新しい学力」に加えて、グローバル教育にも力を入れてきた。その成果は、海外名門大学への進学というかたちで現れている。校長特別補佐の中田大成教諭に、グローバル人材育成の経緯と手応えを聞いた。
グローバル教育の土台、「新しい人間力」「新しい学力」を養う
今、海城が取り組んでいるのは、グローバル・スタンダード(世界標準)に堪え得る教育である。同校は都内屈指の男子進学校として、東京大学をはじめとする国内難関大学への進学率が高いことで知られるが、近年は海外名門校への合格者を輩出するようになっている。
その背景には、1990年代から取り組んできた学校改革の歴史がある。
学校改革の発端は、東大に入ってからの留年率の高さだった。「当時は知識量を競う受験が主流であり、詰め込み式の学習が浸透していた時代です。本来、大学合格はゴールではなく、社会に出てから真価が問われるべき。本校の建学の精神は“国家・社会に有為な人材育成”というもの。その国家・社会で活躍できる“有為な人材”を育てるために、『新しい人間力』と『新しい学力』をバランスよく養う教育を実践しようと考え、学校改革に踏み切ったのです」。
そう説明するのは、中田大成・校長特別補佐である。
「新しい人間力」とは、対話的なコミュニケーション能力とコラボレーション能力を備えた力のこと。これからの社会では、異質な人間同士が集まって高いパフォーマンスを生み出していく、共生や協働の力が求められる。同校ではその「新しい人間力」を養うため、自分自身に対する挑戦や仲間との協力を体験できる体験学習プログラム「プロジェクトアドベンチャー」や、演劇的手法を用いて人間関係力や共感能力・想像力を育む「ドラマエデュケーション」を取り入れた。
一方の「新しい学力」とは、課題設定・解決能力のこと。記憶重視の知識獲得型の学力だけではなく、自ら課題を設定し、情報を収集・分析して価値評価をし、解を導き出して人に伝える総合的な能力のことである。その「新しい学力」を養うため、同校では生徒参加型の授業を積極的に導入した。その一つが、社会科総合学習である。
「これは、社会科で導入した探究型の総合学習で、自らテーマを設定し、企業や役所などに取材に行き、文献を調べ、ディスカッションを行い、自分なりの解を導き出すというもの。その取り組みを基に、中学3年時に原稿用紙30〜50枚の卒業論文を書き上げます。例年、社会科卒業論文は完成度が高く、学外からも高く評価されています」(中田教諭)