模擬国連で最優秀賞を受賞、ハーバード大学へ進学
この「新しい人間力」「新しい学力」を土台に、2011年からグローバル教育に力を入れ始めた。11年に帰国生入試を開始し、中学で1学年30人を迎え入れ始めた。多文化共生・協働の能力を育む共生教育の一層の充実と、グローバル人材の本格的な育成のためである。
12年にはグローバル教育部を新たに立ち上げ、帰国生支援や、海外研修・留学支援、海外大学進学の指導や支援をスタートした。学習面では、国際バカロレア(IB)の手法を学びながら、グローバルスタンダードの教育を実践し始めた。
「当時、国際教養大学(AIU)学長だった中嶋嶺雄氏に相談をしたところ、本校の社会科卒業論文集をお読みになって、“中学3年でこれだけのものを書けるのならば、後は英語力を付ければグローバルでも十分に通用する”という助言をいただきました。そのときは半信半疑だったのですが、やがて中嶋学長のおっしゃることが正しかったことが分かったのです」(中田教諭)
学内に帰国生が増えるにつれて、生徒たちは次第に世界へ目を向けるようになり、18年には、高2生の山田健人君が模擬国連の世界大会(米国・ニューヨーク)に出場、UNIDO(国連工業開発機関)の部門で最優秀賞を受賞した。途上国でのバイオ燃料の持続的な生産を議論し、グループの議論を円滑的に進めた交渉力が評価されたのだ。
「山田君はその後、世界の優れた学生に与えられる“Harvard Prize Book”を受賞し、ハーバード大学へ進学しました。コロナ禍のため当初はオンライン授業だったのですが、昨年夏から大学に通学、現在政治学を学んでいます。山田君によれば、大学の授業は厳しいけれど、海城で学んだ『新しい人間力』『新しい学力』が、今、確実に役に立っていると言います。その言葉を聞いて、本校の学校改革は間違っていなかったと確信したのです」(中田教諭)
その山田君に続こうと、後輩たちも模擬国連で成果を出し続け、グローバル進学への熱も高まって、22年度には4人が海外大学(California Institute of Technology、Swarthmore College、Union College、University of Toronto)に進学した。
「注目したいのは、4人のうち2人が帰国生ではなく、一般入試枠の入学生徒だったことです。名門のCalifornia Institute of Technologyに進学する池田隼君は数学部で、高2時に仲間たちと論文を書き、その論文が欧州の国際数学誌に載った実績を持ちます。留学経験もなかったのですが、独自に英語の勉強に取り組んだ努力家です。こうした彼らの活躍を見て、海城の教育は世界最高峰の大学に通用するのだ、という思いを強くしています」(中田教諭)
積極的な学校改革を経て、グローバル社会の真のリーダーの育成に力を入れる海城、その地歩を確実に固めつつある。