部下を信頼する大切さを
困難に直面して学ぶ
──「クレスコは人間中心、実力本位の会社である」とうたっています。人材育成にはどのように取り組んでいますか。
冨永 新卒は毎年100人程度採用し、しっかり育てています。新人研修の後、3年間はローテーションで複数の案件を担当させるなどして、じっくり適性を見極めます。私たちの仕事に求められる資質は、技術を習得する高い意欲、そして人間力。リーダー職はもちろん、若手でも、自分のスキルをアピールしたり、成果物をお客さまに説明し納得していただく上で、チームで仕事を進めるということも含めて、多様な力が必要になります。ここは素養の部分も大きいので、採用ではその点を重視するようにしています。
文系でも学習意欲のある人や、経済学部出身で、IT経営コンサル的な提案をしたい人など、情報系以外の学部からも積極的に採用しています。またユニーク(一芸)採用も実施していて、例えば囲碁のアマチュア日本一の学生や、全国レベルのゴルフ部の主将を務めた学生を採用。ここ数年、多様な能力や人間力を持った社員が増えています。
──ご自身のキャリアの中で、困難な時期はありましたか。
冨永 事業部長だったときに、大トラブルが起き、納期を延期せざるを得ない状況に追い込まれました。お客さまはひどくお怒りで、上司と共に謝罪しに行っても聞いてもらえない状態。そのときに助けてくれたのが部下たちでした。チームメンバー総入れ替えで、急遽集まったメンバーでしたが、技術やマネジメントなど、秀でたスキルのある面々で、寝る間も惜しんで新しいチームが団結し、トラブルを見事に解決してくれたのです。
この経験を経て、考え方が変わりました。それまでは、リーダーは部下を頼ってはいけない、という思いがありましたが、それはエゴだと気付きました。しっかり任せれば部下が成長し次の世代を担う。そして部下の部下が育つ。実際に、そのときのメンバーは皆、現在は立派なリーダーになっています。そういう「人を残す」行動が次の成長につながるのだと実感しました。