改正電子帳簿保存法(以下、電帳法)やインボイス制度への対応は、非効率な経理業務をデジタル化する絶好のチャンスでもある。クラウド会計ソフトなどでおなじみのマネーフォワードは、法対応をきっかけに「経理のDX」を推進。その取り組みについて、同社の経理本部長に聞いた。
業務効率化のために
スキャナ保存を推進
電帳法とインボイス制度への対応は、待ったなしの課題である。請求書のフォーマット変更や、システムの改修・更新、業務プロセス見直しなどの時間と手間を考えると、早急に動きださなければならない。
「電帳法について当社は、数年前から段階的に対応してきました。2019年には、PDFなどの電子ファイルで送られてきた請求書を電子ファイルのまま保管する電子取引に完全対応し、法改正された22年1月までには、紙で受け取った請求書をスキャナ保存する体制をグループ全体の経理部門で整えています」
そう語るのは、マネーフォワードの執行役員経理本部本部長の松岡俊氏である。
執行役員 経理本部 本部長
松岡 俊氏
1998年にソニー入社、各種会計・税務業務に従事し、決算早期化、基幹システム、新会計基準対応PJなどに携わる。在職中に、中小企業診断士、税理士および公認会計士試験に合格。2019年4月より、マネーフォワード財務経理共同本部長として参画。20年公認会計士登録。
22年1月の電帳法改正で、スキャンした紙の請求書を保管し続ける必要はなくなった。
「法律上、スキャナ保存は任意ですが、効率化には欠かせない要素と判断し、適用しました。保管の手間やスペースが要らず、検索も簡単な電子書類の方が経理業務の効率化に結び付くと考えたからです」と松岡氏は説明する。
クラウド会計ソフトなどを提供し、企業のデジタル化、効率化を支援するマネーフォワードは、自社の「経理のDX(デジタルトランスフォーメーション)」も積極的に推進している。
「経理業務の効率化が進むと、例えば事業部門に対する費用削減の提案といった付加価値業務の比重を高めることができます。『経理のDX』は、経営や事業運営にも利益をもたらす重要な取り組みであり、電帳法やインボイス制度への対応は、その取り組みの大きなきっかけにもなるのです」と松岡氏は語る。
実際、マネーフォワードの経理本部では電帳法に対応した経理業務改革によって、残業時間の減少や有給休暇取得日数の増加といった“働き方改革”の効果も表れている。
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