パーパスドリブンで行動し、
社会的インパクトを目指す

 カルチャー変革に当たって「会社のパーパス」を掲げたとのことですが、DevOps実践においても「プロジェクトのパーパス」を共有することが重要ではないでしょうか。

 その通りです。当社にはプロジェクトを始める前に、DevOpsで意義を理解する「パーパス・ビフォー・アクション」という文化があります。まず、プロジェクトの実行によってパーパスにどれだけ貢献できるか、開発チームや関連部署が集まって話し合い、仮説を立てます。実践して結果が出れば振り返り、得られた学びを分析します。

 一人ひとりがパーパスドリブンで行動し、互いにリスペクトしながら学び合うことで、市場に提供できる価値も大きくなるはず。その結果、社会を変えるような「インパクト」も生まれるかもしれません。むしろ、社会に与えるインパクトこそが、DevOpsが目指す最終目標ともいえます。お客様がどのように我々の製品を活用し、世界をよりよいものにしているのか。インパクトが生み出されるまでのストーリーを知ることによって社員のモチベーションも上がり、DevOpsもさらに高速で回り始めます。その結果、製品の品質も大きく向上するはずです。

ワールドワイドな
DevOpsのプラットフォーム

 FileMakerはプログラミングの知識がない人でも使える、ローコードのシステム構築ツールです。開発側と運用側が同じ画面を見ながら議論、作業ができ、まさにDevOpsのためのテクノロジーといえます。どのような企業が活用していますか。

 FileMakerはワールドワイドなプラットフォームです。ウォルト・ディズニー・カンパニー、ファイザーなど全米上位500社の95%がユーザーです。日本においても、大手から中小に至る10万以上の組織に導入いただいています。また9割以上の大学病院が利用するほか、多くの医療機関で導入されており、COVID―19に関わる地方政府や救急医療の現場でも利用が広がっています。

 このように世界中で活用いただいているFileMakerの強みはやはり、驚異的な開発スピードと運用開始に至るプロセスの構築でしょう。誰もが、たった数時間でアプリケーションをつくれて、複雑な業務データを可視化し、分析できるのです。

 一例として、アメリカのスポーツテレビ局であるESPNのケースをご紹介しましょう。同社はメールやエクセルで情報共有していましたが、タイムリーな連携ができず問題が起きていました。そこで新たなシステムを構築することになったのですが、何しろテレビ番組の制作現場は24時間体制で、年中無休です。“Show must go on”(ショーは止められない)という宿命の下、放送事故を起こさずに複雑なソフトウェアを開発するのは不可能ではないかと、誰もが危惧しました。しかしFileMakerでDevOpsを実践し、走りながら改善を重ねることで、大胆な改革を無事に成し遂げることができたのです。

 このように、DevOpsのメリットはソフトウェア開発の生産性向上に留まりません。何よりDevOpsがもたらすスピードは、組織を常識の枠から解き放ちます。その結果、パーパスドリブンで行動するメンバーたちが、想像を超えるインパクトを生み出してくれる。さらにはステークホルダーを巻き込み、あらゆる組織文化に劇的なトランスフォーメーションを呼び起こしていくはずです。

 新陳代謝が不可欠なVUCA時代だからこそ、組織にダイナミックな変革をもたらすDevOpsという手法が非常に有効であり、我々もみずからの経験を通じてその威力を知っています。今後もDevOpsを高速で回し、アジャイルに組織進化を遂げていくことでしょう。