防御と攻撃。人間の体内にはウイルスや病原菌から体を守る二段階の免疫が備わっている。病気を未然に防ぐために重要なのは、防御の免疫機能を高めてウイルスや病原菌を体内に侵入させないこと。それには適度な運動とバランスのいい食事、十分な睡眠。そして、防御の免疫機能を高める乳酸菌を摂るという習慣だ。免疫機能を高め健康体を維持する方法・対策について、ハイパフォーマンススポーツセンター/国立スポーツ科学センターの清水和弘研究員に話を聞いた。

粘膜免疫はウイルスの侵入を防ぎ、全身免疫は攻撃して排除する

独⽴⾏政法人⽇本スポーツ振興センターハイパフォーマンススポーツセンター/
国⽴スポーツ科学センター
清⽔和弘先任研究員筑波⼤学⼤学院修了後、早稲⽥⼤学、筑波⼤学を経て現職。アスリートの免疫機能評価法、感染防御対策の研究を⾏う。2012年ロンドン五輪で⽇本代表をサポート。免疫機能の簡易測定キットの開発も⼿がける。オリンピック・パラリンピックの選⼿村村外サポート拠点の運営責任者も務めた。

「くしゃみと鼻水が止まらない」「体がだるくて熱っぽい」。どちらも典型的な風邪の症状だが、実は体内に侵入しようとする病原体(風邪の場合は主にウイルス)と、侵入を阻止しようとする免疫機能の“戦いの場所”によって症状が異なる。

 国立スポーツ科学センターの清水和弘先任研究員は、免疫機能をこう説明する(以下全てのコメントは清水研究員)。

「免疫機能は“疫(病気)を免れる機能”と書くように、ウイルスや細菌のような非自己のもの(体の中にもともとないもの)を排除する機能、病気にならないために働く機能のことです」

 免疫には大きく二つ、「粘膜免疫」と「全身免疫」があり、第1段階の粘膜免疫は侵入阻止、第2段階の全身免疫は排除というように役割が違う。

「目・鼻・口・腸管といった外と接する部分にある粘膜には分泌型IgAという物質があり、病原体の粘膜下への侵入をブロックしたり、病原体が持つ毒素を中和する働きをします。粘膜上に残った病原体はくしゃみや鼻水によって体外に排出されます。」(※分泌型IgAについては後述)

 病原体が粘膜を突破して体内に侵入、定着し増殖することを感染という。

「すると、全身免疫が働き、免疫細胞が病原体を捕えて排出しようとします。攻撃にあたり、体温を上げて免疫細胞を活性化させようとするので、発熱したりのどなどに痛みを伴ったり、だるさを感じたりします」

 痛みやだるさ=倦怠感は辛く、仕事に支障が生じるし、高熱がでると出社や就労ができなくなる。そうなる前に、粘膜免疫を高め、病原体の侵入を防ぎたいところ。しかし、私たちの生活習慣は正反対だ。病原体の活動がしやすい環境を作ってしまい、免疫機能を危機にさらしている。