よつば綜合事務所
公認会計士・税理士
神門 剛 代表

 同氏は、「特に中小企業が、過剰な設備投資で倒産するケースが少なくない。経営者は、既存設備・人員のキャパシティを見極めるべき」と述べる。

 設備投資の際に適切にC/Fを予測せず、資金回収がおぼつかないケースは珍しくないという。C/F経営とは、「営業活動」「投資活動」「財務活動」の三つの視点から現金の流れを読み、常に現金を手元に残していく経営だ。

 売上債権の回収時期を把握して貸し倒れを回避し、また、在庫の適正化によって売れ残りリスクの軽減を図ることができる。結果として先行投資にも力を入れられるようになるのだ。

ITによる効率改善は
身近な日常経理業務から

 しかし、C/F経営の重要性はいわれて久しいものの、実践はなかなか難しい。神門氏は、「経営者自身が先頭に立って、特に経理・財務部門の意識を変えることが重要」と言う。

 問題は、多くの企業で経理部門が日常的な経費精算に時間と労力を奪われていることだ。細かな数字の確認や集計、支払いなどの作業を彼らの手から離さない限りC/F経営の基盤は整えにくいだろう。

「こうした日常的な作業こそ、優先的にITでの運用に置き換え、経理部門はもっと企業の経営戦略に携わるべき」と神門氏は提言する。

 近年は、クラウド型の精算サービスなども提供され、導入のための投資やランニングコスト負担も比較的小さくて済むようになった。全社業務を統合する大がかりなシステムの導入は、付加したい機能が見えてきた次の段階で考えることも可能だ。

「数字に基づくマネジメントは経営の基本。しかし、実際のところ、できていない会社は多い」(神門氏)

 適切なITの導入で経理部門の業務を見直し、強い経営基盤をつくることは喫緊の課題だ。