これまでの経営管理ソフトウェアは、財務経理部門の業務改善という視点からデザインされていた。だが、事業価値や顧客価値を生み出しているのは「現場」であり、事業構造と現場の活動を見据えて、経営管理のあり方を再設計すべき時に来ている。企業が構築すべき次世代経営管理プラットフォームのあり方を、フュージョンズCEOの杉本啓氏に聞く。

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経営管理の再設計

編集部(以下青文字):「現場力を喚起する経営管理」というコンセプトを打ち出しておられますね。

フュージョンズ 代表取締役CEO
杉本 啓
KEI SUGIMOTO
アーサーアンダーセン(現アクセンチュア)、アンダーセン(現PwC)等会計事務所系コンサルティングファームにて、業務改革、システム構築プロジェクトを多数実施、連結会計パッケージソフトウェアの開発責任者、およびアンダーセンのHyperionビジネスの西日本地区責任者を兼務。2003年独立し、「fusion_place」開発・導入支援を中心に活動。

杉本(以下略):この四半世紀、財務報告の複雑化が進んだ結果、管理会計やそれを用いた経営管理は、現場の人々や事業部門のリーダー、経営者にとって、わかりにくいものになっています。経営トップやマネジャーの多くは、計器なしで雲の中を飛んでいるように感じているのではないでしょうか。財務報告改革の流れが一段落したいまこそ、事業構造と現場の活動を見据えて、経営管理のあり方を再設計すべきです。それが「現場力を喚起する経営管理」というコンセプトです。

「現場」という言葉には、複数の意味合いを込めています。一つには、営業・製造・R&Dといった「機能部門」。機能部門には多様な経営管理ニーズがありますが、従来、十分なITのサポートを受けていませんでした。そのため、各部門の状況は、経営層からはブラックボックスになっていました。

 次に「事業部門」。たとえば、同じITビジネスでも、システム開発とSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)では収益構造がまったく異なります。事業が異なれば管理会計上も異なる見方が必要です。

 さらに「グループ会社」も現場といえます。従来の経営管理では、連結決算の視点からデータを収集するだけで、グループ会社の自律的経営管理とその内容の本社側からの可視化といった点は不十分でした。

 これまでの経営管理ソフトウェアは、財務経理部門の業務改善の視点からデザインされていました。部門別予実(予算・実績)管理を基本として、事業や商品群といった大まかな軸で、要約したデータを管理できれば十分でした。しかし、現場では、営業担当別さらには案件別など活動に即した切り口でも予実管理する必要があります。そのためには、要約前の詳細データを現場自身が経営データにつなげる仕組みが必要です。