ダイエットには体重計、営業改善にはKPI
――そもそも、なぜKPIが必要なのでしょうか。また、KPIを設定する際に気をつけるべきポイントは?
先行指標管理というと難しそうですが、実はほとんどの人が実行していることです。たとえば、健康診断がそうです。血圧や尿酸値などを計測してもらい、問題があれば適切な治療を受ける。血圧や尿酸値は、健康という目標に到達するためのKPIにほかなりません。
みなさんが健康診断を受ける理由は何でしょうか? それは、自分の健康を真剣に考えているからです。
同じように、会社の業績を真剣に考えているのであれば、KPIを用いて営業の現場を見える化しなければなりません。そこで求められるのが、科学的な組織営業手法としてのプロセスマネジメントです。
ここで言う科学的は、再現性と検証性を意味しています。つまり、成功した営業活動を「まぐれ」で終わらせるのではなく何度でも再現できること、「本当にうまくいっているのかどうか」をきちんとチェックできること。そのための最適な方法が、KPIを数値で管理することなのです。
ただし、いきなりKPIを設定しようとしてもうまくいきません。繰り返しになりますが、起点は仮説づくり。そして、仮説を行動に反映した計画を立て、それに沿った形でKPIを設定するのです。
先の住宅メーカーの例で言えば、「来場接客件数」「初回訪問アポ件数」「初回訪問実施件数」「初回面談率(初回訪問実施件数÷来場接客件数)」などに加えて、Aさんなら「お礼訪問件数」、Bさんなら「2時間以上の来場接客件数」などをKPIとして計測、管理しています。こうしたKPIをチェックして、効果が出なければ別の仮説を立てて実行してみる。そうやって、AさんとBさんも、失敗を経験しながら成果を上げることができました。
営業マネージャーに求められるのは、この2人のような仮説を立てる力です。この能力を磨くには、日々の思考トレーニングが欠かせません。特に、営業マネージャー向けの十分な研修機会を用意していない企業は、日常業務におけるトレーニング環境を整える必要があります。
そのトレーニング環境となるのが、さまざまなKPIを簡単に取り出せるITツールです。ここでさまざまなデータを見ながら、マネージャーは本質的な課題をとらえ、課題解決に向けた仮説を考えることができる。たとえて言えば、ダイエットしたいと考えている人にとっての体重計のようなものです。
あなたの会社は、業績向上や営業力強化を真剣に考えているでしょうか? そうだとすれば、プロセスマネジメントを実践するための情報環境を整えてください。ダイエットしたい人(営業を改善したい人)は、体重計(KPI)くらいは用意すべきです。