同社が提供するソリューションの一つが、「グリーンファーストオフィス」だ。①ZEB(Net Zero Energy Building)の高い環境性、②働き心地を高める空間提案、③積水ハウスの独自構造、という三つの特徴を持ち、前述したコミュニケーションの促進というソフト面に加えて、ESG経営の観点から建造物の堅牢性や環境対応というハード面でも配慮が施されている。

積水ハウス
東京建築事業本部 業務役員

伊藤一徳
本部長

 ZEBとは、快適性を確保しながら、高い断熱と高効率な空調や照明設備により建物で消費するエネルギーを減らし、太陽光発電などにより創出したエネルギーで、年間のエネルギー収支ゼロを目指した建物のこと。ZEBでCO2排出量を削減して地球環境に貢献する企業イメージの向上にも寄与するだけでなく、光熱費を削減する経営的なメリットもある。18年に建て替えた同社のグループ会社の事務所は、延べ面積が1.4倍に増えたにもかかわらず、建て替え前との比較で1年間の単位床面積当たりの電気使用量は約半分となった(図)。

「当社は、戸建て住宅や賃貸住宅において消費エネルギー収支ゼロを目指すZEH(Net Zero Energy House)をいち早く手掛けました。その技術やノウハウはZEBに応用展開することができます」と積水ハウス東京建築事業本部の伊藤一徳本部長は語る。実際に、同社が手掛けた個人住宅では92%(21年度)が、また賃貸住宅の63%(22年2~10月実績)がZEHになっている。標準仕様の断熱性が高いため、ZEHやZEB化するのにそれほど費用をかけずに済むというメリットがある。

香川県高松市の積水ハウス東四国支店もグリーンファーストオフィスだ。グループ会社も同居し、「会話を生み出す居場所づくり」をテーマに設計された(写真左)。コミュニケーションを活性化する工夫も随所に盛り込まれている(写真右)

 効率一辺倒の一般的なオフィス設計と一線を画した、働き心地を高める空間提案ができるのも戸建て住宅で培った設計提案力のある積水ハウスならでは。コミュニケーションを確保するために人が集うダイニングを設けたり、一人作業のためのスペースを確保したり、生産性向上とストレス軽減のために植栽など目に入る緑の量(緑視率)を高めたりと企業の課題に寄り添う提案を行っている。