経営者に寄り添い
会社を磨き上げる

 名古屋市で設備工事事業と省エネ支援事業を展開する「サンエイテクニクス」の寺尾洋太社長は、売り手側の立場でアドバンストアイを利用し、環境調査・分析・コンサルタントの「環境管理センター」(本社・東京)とのM&Aを成立させて、2022年3月にグループ会社となった。経緯はこうだ。

 寺尾社長は、会社を永続させることが経営者の責務と考えていたが、一族に後継者がおらず、中小企業の株を一族以外の人物に承継する難しさに直面。会社を永続させるにはM&Aが最良だと判断し、当初は、大手のM&A仲介会社に依頼した。ところが、「大切な社員やわが社の歴史、築いてきた信頼、そして私の思いなどを重要視せず、なるべく短期間で買い手の望むものを提供しようとするようなやり方に、不信感が募りました」(寺尾社長)。

 そんな折、岡本社長の著書に出合い「関係した全ての人と企業が心から納得して満足できるM&Aの実現のために全力で支援したい」という考えを知り、アドバンストアイにコンタクトを取ったのだという。「アドバンストアイの担当FAは常に私に寄り添い、時間がかかってもこちらの思いに合致した買い手をしっかりと選んでくれました」と寺尾社長は振り返る。「しばらくして、ある買い手候補先が現れたのですが、担当FAから『先方と面談してみて、先方の取り組み姿勢や企業風土を総合的に鑑み、ここは寺尾社長が望む先ではないとプロセスを中断すべき』との助言があったのです。そのときは、なぜ? 実際会ってみないと……と一瞬戸惑いましたが、交渉状況の透明性ある説明を受け理解できたとともに、M&Aを終えた今は、そのような判断に至るくらい私の会社や当時の私の環境を考えてくれていたということが分かりました」。

売り手側のサンエイテクニクスの寺尾社長(右)と買い手側の環境管理センター・水落憲吾社長(左)。今回のM&Aでは、寺尾社長は上場企業のグループ会社となることで後継者問題を解決するとともに、経営者として引き続き自社を率いて事業の発展を狙う機会を得ることができた

 担当FAは「思い」をくみ取る作業と並行して、サンエイテクニクスの「磨き上げ」を行っていった。磨き上げとは、必要に応じて弁護士・会計士・税理士などの専門家のサポートを受けながら、企業の情報や各関係者との状況を把握、整理し、M&Aの阻害要因を取り除き、強みを拡大し、弱みを改善する作業だ。企業価値を向上させ、M&Aをスムーズに運ばせる手法である。こうしてサンエイテクニクスのM&Aは成功した。この成功例で注目すべきは、売り手・買い手の双方にメリットが生まれ、サンエイテクニクスの事業を継続して発展させる約束がされた点だ。

「売却利益も大切ですが、クライアントの事業が持続して成長できる相手を探すことを当社では重要視しています」と岡本社長。「顧客利益の最大化とは、取引価格の高さだけで決まるものではない」とアドバンストアイでは考えているのだ。