昨年1月の持ち株会社(ホールディングス)体制への移行から1年が経過したNIPPON EXPRESSホールディングス。次なる変革として事業会社・日本通運が担う「日本事業」再編を見据える。真のグローバル物流企業に向け確かな第一歩を踏み出したNXグループの、“現在地”と“その先”を齋藤充社長が語る。
――2022年1月のホールディングス(以下、HD)体制への移行から1年がたちました。
HD体制への移行と「NX」という新たなグループブランドの導入、さらにグループの統合拠点(NXグループビル)の新設という三つの変革を同時に行いましたが、順調なスタートが切れました。発足後の大きな取り組みでは、昨年7月にHDの組織であるGBHQ(Global Business Headquarters=グローバル事業本部)の再編を行い、日本を含む5リージョン(日本、米州、欧州、東アジア、南アジア・オセアニア)を統括する体制をスタートさせました。長期ビジョンで掲げる「グローバル市場で存在感を持つロジスティクスカンパニー」という方向性を体現した組織ができたことで、世界を意識したNXグループの姿がより見えやすくなり、事業戦略の実践が加速しました。
また、GBHQ内で外国籍の部長級人財を採用するなど、人財のグローバル化・多様化も進んでいます。
――HD体制に移行したことによるメリットは何でしょうか。
事業ポートフォリオの再編や見直しを格段に進めやすくなりました。NXグループがさらに成長していくためには、各事業が競争力を発揮できる形につくり変えていくことが大事です。すでに事業のカーブアウト、グループ内での重複事業の統合・移管などさまざまな手法で再編を進めていますが、引き続き全体最適の観点からグループの〝あるべき形〟に向けた取り組みを進めていきます。
そうした中で、私は今年1月から、兼務していた事業会社・日本通運の社長を退任して、HDのトップに専任しました。グループ経営の強化やグローバルガバナンス体制の確立というHD本来の仕事に集中し、それに対してさらに魂を込めていきます。
「日本事業」再編で成長を加速させる
――次なる変革として、日本通運が担っている日本事業の再編に着手する方針を打ち出しています。
齋藤 充
代表取締役社長 社長執行役員
とかく日本という市場をひとくくりで見てしまいがちですが、東名阪(東京・名古屋・大阪)地域とそれ以外の地域とでは、マーケットの規模も質も違います。東名阪はグローバルに直結するエリアであり、お客さまの意思決定機関を多く抱えたマザーマーケットです。グローバルで成長していくことを目標にしている当社にとって、他の海外リージョンと同じ次元で捉えるべき重要な市場です。
他方、北海道、東北、中・四国、九州は東名阪と比較して事業環境やマーケット規模は大きく異なります。
従って、そこに東名阪と同等の投資リターンを求めることは経営効率の面からも適していません。各エリアのマーケットや役割・機能等に即した組織、戦力構造につくり変え、競争力を磨き上げていく必要があります。再編を実行していくことは簡単ではありませんが、ここを変えていかなければ日本事業全体がいずれ苦境に立たされることになってしまいます。