宅配便はすでに佐川急便の「運ぶ」の一部でしかない――。全国約7000社のパートナー企業と連携して、あらゆる「運ぶ」のメニューを用意したと断言する巨大な「運び切る力」をつくり上げた。見据えるのは、「2024年問題」をきっかけに生まれようとしている新たな物流市場だ。

 年間14億個を超える宅配便を取り扱っている佐川急便。同社に対する世間のイメージは「宅配大手」というのが一般的だろう。だが、最近ではそれだけにとどまらず、宅配以外の「運ぶ」事業領域を急速に広げている。その中心となっているのがTMS(Transportation Management System)と称されるチャーター輸送を中心とした輸送サービスだ。

 同社の本田恵一執行役員は「TMSはお客さまにとって最適な輸送方法を提供するサービスの総称です。大型貨物や重量物、異形物など、およそ佐川急便が運べないだろうと思われるものまであらゆる『運ぶ』のメニューを用意しました。『宅配便で運べないもの全てが対象』と言った方が早いでしょう」と説明する。実際、これまでに取り扱った貨物を挙げると、トンネル内壁のコンクリートセグメントや携帯電話基地局のコンクリート柱といった重量物、医薬品物流の分野にも注力しているほか、動物園から依頼を受けた動物類、さらには輸出用の産業用ロボットなど、その多様さには驚かされる。

「2024年問題」に直面する“自家物流”比類なき「運ぶ力」で産業界の課題に対応し、ともに解決するトンネル内壁のコンクリートセグメントの輸送フロー

拡大を続けるパートナー企業

 そうした多種多様な輸送ニーズを支えているのが全国約7000社に及ぶパートナー企業。各社とも専門分野や得意領域があり、佐川急便が顧客から相談された課題を共に解決に導くパートナーという位置付けだ。現在、TMSで稼働する車両台数は月間で延べ24万台に及ぶ。また、パートナー企業も年に数百社のペースで増え続けており、「今後も事業領域の広がりに伴ってパートナー企業数はさらに増えていくでしょう」。

「2024年問題」に直面する“自家物流”比類なき「運ぶ力」で産業界の課題に対応し、ともに解決する佐川急便 東京本社
本田恵一執行役員営業・事業開発・営業開発・品質保証担当 兼 営業部長 兼 品質保証部長

 佐川急便には全国に約2万6000人のセールスドライバー®(SD)がおり、彼らは宅配便の集荷・配達で日々顧客を訪問している。その際、顧客からは宅配便にとどまらない物流に関するさまざまな相談を受ける。そうした現場発の課題はグループ横断型の専門家集団である先進的ロジスティクスプロジェクトチーム「GOAL(Go Advanced Logistics)」に吸い上げられてソリューション案が作成され、案件の内容などに応じてパートナー企業に輸送を依頼していくというのがTMSのスキームとなる。

 佐川急便本社や全国約430カ所の営業所には専門部署であるTMS課が置かれ、パートナー企業との間で緊密な連携体制を構築。「パートナー企業さんは仕事をお願いすることで車両の稼働率が向上して経営の安定化につながり、当社はお客さまの課題解決に貢献できる。ウィンウィンの関係が実現できています」と自信を見せる。

「2024年問題」浮上する 「自家物流」市場

 ここ数年、宅配便に次ぐ同社の第2の柱に成長しつつあるTMSだが、2024年4月から始まるトラックドライバーの時間外労働時間の上限規制、いわゆる「2024年問題」を控えて、顧客などから寄せられる相談件数が急増しているという。中でも目を引くのが、「自家物流」と呼ばれる、物流を自前で行ってきた企業などから物流業務をアウトソーシングしたいという相談だ。

「白ナンバー」の自家用トラックで行われる自家物流は、推計約40兆円という大きな市場がありながら、これまで一般の物流事業者との接点をあまり持ってこなかった。しかし、2024年問題が目前に迫る中で、自前でのドライバー確保など事業継続に不安を抱えた企業から物流業務を任せたいという相談が目に見えて増えているという。