物流業界がトラック輸送の「2024年問題」を乗り越えるための鍵の一つは、JR貨物が物流の担い手として、これまで以上に役割を発揮していくことだ。そのためには、鉄道輸送が持つ“強み”をより確かなものにすると同時に、長年の課題である“弱み”を克服することが不可欠となる。

 わが国で唯一の全国規模の貨物鉄道会社であるJR貨物に今、かつてない大きな「追い風」が吹き、期待が寄せられている。カーボンニュートラル(CN)とトラック輸送における「2024年問題」という二つの“風”だ。

貨物鉄道輸送に強烈な追い風。カーボンニュートラルと「2024年問題」解決の切り札となるか日本貨物鉄道
和氣総一朗執行役員鉄道ロジスティクス本部 副本部長 営業部長

 政府が2050年までのCN実現を宣言したことを受け、日本全体のCO2排出量の約2割を占める運輸部門で排出削減に向けた取り組みが加速。環境に優しい大量輸送機関である貨物鉄道に改めて注目が集まっている。また、24年4月からは働き方改革の一環としてトラックドライバーの時間外労働の上限規制が開始され、輸送距離500キロメートル以上は1人のドライバーで輸送することが事実上難しくなるといわれている。

 和氣総一朗執行役員は「ここに来てお客さまからの相談が急速に増えており、貨物鉄道への期待の高まりを肌で感じています」と語る。「JR貨物は輸送距離1000キロメートル以上ではトンキロベースで国内物流全体の50%以上という高い分担率があるものの、400~600キロメートルでは5%を割っています。『2024年問題』によって特に500キロメートル前後での運び方の見直しが避けられない中で、当社がお役に立てる部分はこれまで以上に増えていくはずです」。

BCP対策強化で「災害に弱い」を克服へ

 行政も貨物鉄道のさらなる役割発揮に期待を寄せる。国土交通省は昨夏に公表した「今後の鉄道物流のあり方に関する検討会」の中間取りまとめで、JR貨物が取り組むべき課題を14項目にわたって示した。

貨物鉄道輸送に強烈な追い風。カーボンニュートラルと「2024年問題」解決の切り札となるか日本貨物鉄道
髙橋 顕執行役員鉄道ロジスティクス本部 副本部長 戦略推進部長

 髙橋顕執行役員は「装置産業である貨物鉄道を有効に活用すべきとの課題意識から、『JR貨物、もっと頑張れ』と叱咤激励を頂いたものと受け止めています」と語る。

 示された課題は多岐に及んでいるが、中でも喫緊かつ最大のテーマとなるのが、災害時における対応力の強化だ。貨物列車が走行する在来線は明治時代に整備されたものが多く、川沿いや山裾を縫うように走行しているために、自然災害の影響を受けやすい。「JR貨物は災害に弱いというお叱りをよく受けます。物流の強靱化に向け、国や行政にもお力添えをお願いしていますが、『災害は起きるもの』との前提に立って、自分たちでできるBCP(事業継続計画)対策に取り組んでいくことが大事です」(髙橋執行役員)という。

 その一つが鉄道による迂回輸送である。例えば、東海道線や東北線で輸送障害が起きた場合は、日本海側のルートを経由して輸送する。だが、機関車は走行できる線区が限られているため、迂回輸送の設定も簡単ではない。そこで現在、東北線で使用している「EH500形式」という交直流双方に対応した機関車を日本海側や上越線を走行できるように改造を進めており、よりスムーズな迂回輸送の実現を目指している。

貨物鉄道輸送に強烈な追い風。カーボンニュートラルと「2024年問題」解決の切り札となるかスムーズな迂回輸送の実現を目指し日本海側や上越線を走行できるように改造を進めているEH500形式交直流電気機関車

 トラック、船舶など他の輸送モードとの連携強化も不可欠だ。特に本州と九州を結ぶ大動脈である山陽線は、迂回ルートの設定が難しいことから、災害時にはトラックや船による代行輸送に頼らざるを得ない。具体的には、全国から応援に来たトラックの駐車場やドライバーの宿泊施設が必要になるため、周辺自治体等との協定締結などを通じて事前確保に取り組んでいる。また、船舶代行では、港湾と連携することで災害時の荷役作業の手配などを円滑にしていく。和氣執行役員は「今後は輸送モード間での協調をより加速させるため、フェリーをはじめとする船会社との定期的な情報交換にも積極的に取り組んでいきます」と語る。