日立物流が「グローバル3PLリーディングカンパニー」へのステップアップに向け新たな歩みを始める。KKRという新しいパートナーを得て、その連携の下、DX(デジタルトランスフォーメーション)を駆使しながら「物流」の領域拡大や新たな価値創造に挑む。新体制への決意を髙木宏明社長が語る。

 日本を代表する総合物流企業、日立物流が新たなスタートを切る。株主構成の変更により、米投資ファンド大手・KKRが議決権の90%を、日立製作所が10%を保有するスキームとなり、これに伴い4月1日に社名を「ロジスティード」に変更する。「ロジスティード(LOGISTEED)」とは、同社が2017年から掲げてきたビジネスコンセプト。そのコンセプトを社名に昇華させることからも明らかな通り、株主構成が変わっても、同社がここ数年にわたり進めてきた事業戦略に大きな変更はない。髙木宏明社長は「KKRというパートナーを得て、新たな価値創造に向けてパワーアップすることができます」と胸を張る。

日本を代表する総合物流企業が社名変更で新たなスタート。新体制への決意は?日立物流
髙木宏明代表取締役 社長執行役員(COO)

 同社は30年に、現在約7500億円の売上高を2倍の1兆5000億円まで引き上げることを中長期の「目指す姿」として掲げているが、伸びしろは海外での成長に置く。「世界規模のファンド会社であるKKRのグローバルでの知見やネットワークが活用できることで、日系以外の企業に対するビジネスチャンスが格段に広がります。KKRとのパートナーシップをいい意味で“使い倒そう”と思っています」。規模拡大のためにはM&A戦略の加速も不可欠となるが、ここでもKKRの世界中に張り巡らされたネットワークが生きることは想像に難くない。

 今回の資本構成の変更によっていったんは上場廃止となるが、成長を加速させることで早期の再上場を見据える。「それほど時間をかけず、5年以内の再上場を目指します。そのために、いつでも上場が可能な内部体制を維持していきます」と語る。

「長年親しんできた日立の名前はなくなりますが、従業員は非常に前向きです。日立製作所も株式10%を保有しており、業務面ではこれまで以上に連携を強めていきます」

「物流」の領域を広げるLOGISTEED戦略

 新生・ロジスティードが力を入れていくビジネスコンセプト「LOGISTEED」とは改めてどのようなものなのか――。中期経営計画「LOGISTEED2024」の重点施策の一つに「新たな付加価値による事業領域の拡張(LOGISTEEDの加速)」を掲げ、製造と物流の境界領域における新サービスの拡大、VAS(Value Added Services)を展開している。髙木社長は「当社は自らの事業領域を物流・情報流・商流・金流という四つの“流”で捉えています。モノの所有権が移転するとき、必ずこの四つの流れが起こります。それらを束ね、取り込んでいくことがLOGISTEEDの目指す姿であり、言い換えれば、『物流』の概念を広げていかなければ、これからの産業構造の激変には対応できないと考えています」と説明する。

日本を代表する総合物流企業が社名変更で新たなスタート。新体制への決意は?製造と物流の境界領域におけるサービスのVAS(Value Added Services)を展開している。写真はパソコンのキッティング作業

「物流」では、少子高齢化による労働力不足への対応が不可欠となる中、自動化・省力化やDXによるスマートロジスティクスの実現に力を入れる。「これからの物流はいや応なく装置産業化が加速していきます。その際、日立製作所の物流部門が源流である当社はITやデジタルとの親和性の高さが大きな強み。その強みが生きます」。日本で培ったスマートロジスティクスの知見・ノウハウを広く海外にも展開していく。