過疎の村が世界に示した
変革コミュニティの力

 デジタル時代の価値共創は、企業と顧客の間だけに限定されるものではない。たとえば、2004年の中越地震で大被害を受け、住民が約800人に激減した旧山古志村(新潟県長岡市山古志地域)ではいま、“デジタル村民”による価値共創が進んでいる。

 有志団体である山古志住民会議は、旧山古志村が発祥の地とされる錦鯉をモチーフにしたデジタルアートをNFT(非代替性トークン)として発行、その販売益を財源に地域の課題解決を独自に推し進めている。

 このNFTは山古志の電子住民票を兼ねており、デジタル村民のコミュニティチャットで地域活性化のための議論が交わされている。具体的な事業プランが固まると、それを実行するかどうかをデジタル村民の投票によって決定し、独自財源から活動予算をつける。このように、バーチャル“コミュニティ”としての山古志は、Web3時代の組織形態として注目されるDAO(自律型分散組織)そのものと言ってよく、そこに人・物・金・情報が継続的に集まることで、グローバルな関係人口を創出している。

“山古志DAO”が示唆するところは、経営資源としてのコミュニティとは、パーパス(大義)を共有した個人が自律的につながることによって形成され、人・物・金・情報を包み込んで変革をドライブしていく、「変革コミュニティ」であるということだ。そこでは、個人と組織のパーパスが同一化し、圧倒的に高い生産性と成果を生み出す。

 こうした変革コミュニティは、社会や企業のデジタル変革に大きなインパクトをもたらす。DXとは、デジタルの力によって、多様なステークホルダーやバリューチェーン全体の関係を再構築し、新たな価値を共創していく営みにほかならないからである。

 社会や企業のリーダーは、ステークホルダーやバリューチェーンの構成主体全体をコミュニティとしてとらえ、デジタルを活用して主体同士のつながりをデザインすると同時に、それをマネジメントしていく。これからの価値共創においては、それが重要なポイントとなるだろう。


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