木造住宅建築のノウハウを
生かした商業・事業用建築
分譲住宅や注文住宅で実績がある同社だが、最近力を入れているのが、木造住宅建築のノウハウを生かした商業・事業用建築である。2010年に公共建築物等木材利用促進法が施行されて以来、住宅以外の中大規模建築物において、構造体を木質材料とする木造化のニーズは高まっている。
荒木義則執行役員は、「鉄骨造やRC造と比べて基礎工事や解体時の費用を抑えられ、減価償却期間も短いため大きな節税効果が期待できます。また木造建築には調湿作用があり、断熱性にも優れているため、快適な室内環境をつくり出せます。さらに木は耐久性に優れ、軽くて柔軟性も高いため、台風や地震などの災害に強い建物を造ることができます」と木造の利点を話す。木材は再生産が可能な循環型資源で、地球の二酸化炭素排出削減に大きく貢献するため、木造建築物を建てることは企業イメージの向上にもつながる。
アイダ設計が得意とするのは、木造住宅建築の延長線上にある250~450平方㍍程度の商業・事業用建築だ。これまでに歯科医院や保育園、グループホームやコインランドリーなどを手掛けてきた。店舗や事務所、倉庫などの建築も可能だ。
「他社との連携も積極的に行っており、例えば歯科医院の領域では、歯科通販最大手の歯愛メディカルと業務提携をしています。歯科医院は医療設備の導入に費用がかかるため、建物の費用はできる限り抑えたい。当社とのコラボレーションにより、従来よりも大幅なコストダウンで歯科医院の建設が可能になっています」。そう話すのは阿部真寿美専務取締役だ。事業によっては、行政の補助金対象により、コストを抑えられるケースもある。
また、同社の木造建築は、大スパンの無柱空間など大規模木造建築にも対応する。プレカット工場の事務所棟はそれ自体がショールームで、大空間の屋根を支える挟みトラス構法「張弦トラス」や、地震力に抵抗する耐力壁「縦板壁」などの技術が採用されている。それらの技術も生かしつつ、多様な条件や規模の木造建築物に対応していく考えだ。
首都圏を中心に広範囲のマーケットに進出しているアイダ設計。非住宅木造建築の売上高は全体の1割程度を目標としている。「今後は他社との業務提携の可能性を広げながら、事業を拡大していきたい」と大槻常務執行役員は意気込んでいる。