だが、バラ色に映る他国との比較もここまでだ。インドは22年に世界五大経済大国の中で最も急速な成長を遂げたが、実質的に消費力を握るのは依然として一部の富裕層に限られる。世界銀行によると、21年のインドの1人当たり国内総生産(GDP)はわずか2257ドル(約30万3200円)で、中国の1万2556ドルを大きく下回った。HSBCによると、インドの裁量的支出は中国よりもはるかに少額で、インドネシアさえ下回る。さらに、インドでは女性の労働参加率が低い上、大家族が主流であるため、賃金労働者が扶養する家族の人数が多い。

 とはいえ、経済成長への寄与度が突出して大きいのは投資よりも消費だ。失業率が高止まりしていることが大きな課題となっているが、これは民間企業がフォーマル(公式)経済への投資に慎重姿勢を崩さないことが主な理由だ。

 独立系のシンクタンク、インド経済監視センター(CMIE)によると、23年3月の失業率は7.8%だった。過去4年間の大半にわたり失業率は8%前後で推移している。労働参加率が非常に低く、公式統計では約4割に過ぎないことを踏まえると、これは特に懸念すべきことだ。

 教育も課題だ。インドでは一流大学の工学部や経営学部の卒業生を除き、大卒でも就職に苦労することが多い。同国でスキル評価サービスを提供するウィーボックス(Wheebox)によると、昨年実施した全国雇用適性試験(WNET)を受験した男性卒業生のうち、合格者はわずか47%だった。女性卒業生の合格率は53%だった。

 製造業部門の雇用を増やし、女性の労働力参加を促すことが問題解決に役立つはずだ。CMIEの責任者を務めるマヘシュ・ビアス氏は、インドは大規模な民間投資を促進する環境を築く必要があり、ここ数年はそうした環境が欠如していると指摘する。

 対照的に中国は、膨大な人口を世界中の製造業の労働資源として活用することで大きな成功を収めてきた。世銀によると、21年に製造業がGDPに占めた割合は中国が27%だったのに対し、インドはわずか14%だった。インドでは最近、製造業の活性化に焦点を当てた政策が一部で顕著な成功を収めているが、インフラ投資強化や労働市場改革など、さらに多くの政策実行が必要とされている。

 時宜を捉えることが何よりも重要だ。今でこそインドでは若年層が目立つが、国連によると、早ければ47年に人口はピークを迎える。

 西側諸国が中国への警戒心を強め、中国の人口が減少に転じる中、インドは岐路に立たされている。その未来は、膨大な人的資源を生かして超大国となり、莫大(ばくだい)な投資を呼び込むか、あるいは時宜を捉えられず可能性を無駄にしてしまうかのどちらかだろう。

(The Wall Street Journal/Megha Mandavia)

TOP