長時間労働やサービス残業に対する規制は強化の方向
勤怠管理には、法規制への対応という側面もある。近年、長時間労働やサービス残業に対する社会の目は厳しさを増しており、労働行政も基本的には同じ方向を向いている。また、過労による精神疾患などをめぐって従業員が会社の責任を問う訴訟も目立つ。
右表に概要をまとめたが、法規制の変化について、その一例を紹介しよう。
2006年の労働安全衛生法改正により、長時間の時間外労働を行った労働者に対して、医師との面接指導などの措置が義務化された。同改正法は月当たり100時間、80時間といった基準をもとに、企業が行うべき措置を示している。
また、2010年の労働基準法改正。厚生労働省労働基準局長の通達は、この法改正について「長時間労働を抑制し、労働者の健康を確保するとともに仕事と生活の調和がとれた社会を実現する観点から、労働時間に係る制度について見直しを行うもの」と述べている。
具体的な変更点としては、1ヵ月で60時間を超える時間外労働について、割増賃金率が25%から50%に引き上げられた。ただし、その対象は大企業とされており、現段階において中小企業については留保されている。また、労使協定の締結が前提だが、従来は1日または半日単位でしか取得できなかった有給休暇を1時間単位で使えるようになった。特に子育て世代のニーズに対応する施策と言えるだろう。
このような制度を導入するには、人手による勤怠管理では限界がある。それは時間年休だけでなく、割増賃金の計算、あるいは柔軟な勤務時間の設定を可能にする変形労働制を導入する際にも言えることだ。勤務体系や雇用形態は複雑化、多様化しており、それに対応した管理を実現するにはシステムの力を活用せざるを得ない。
勤怠管理システムは以前から利用されてきたが、近年、その機能はますます拡充され使い勝手も向上している。また、ソフトウェアを購入する必要のあるシステムだけでなく、初期投資が少なく月額利用料方式のクラウドサービスも登場している。それぞれの企業の規模やビジネスの形態に合わせて、さまざまなタイプの勤怠管理システムを選ぶことができる。