理科における
クリティカルシンキングの学び
一方、クリティカルシンキング(批判的思考力)の育成は、理科の分野で行われる。
「自然科学のオーソドックスな研究法は、自然の事物や現象を説明するために、まず仮説を立てて、実験で検証するという手続きを取ります。さまざまな実験を通して事物や現象を多角的に検証する作業を通じてクリティカルシンキングが育つのです」と中田校長特別補佐。
海城は、21年7月に「Science Center(3号館)」を竣工した。地学・物理・生物・化学など合計九つの実験室があり、日々中学と高校の生徒たちの実験でフル稼働している。理科では実験に関する独自の教材が用意され、それに基づいて実験が行われる。
例えば中1・中2向けには「化学実験書」があり、試験管やガスバーナーの使い方など実験室における基本操作から始まって、化学変化と化学反応式を学び、中2でテルミット反応や水酸化ナトリウム水溶液の電気分解など、次第に複雑な実験に進んでいく。
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生物では、「ブタの眼の解剖」も行う。生徒1人ずつに部位が渡され、実際にブタの眼を解剖し、水晶体や角膜を取り出して観察するなどの実験を行う。
「ブタの眼を解剖して構造を観察し、哺乳動物の眼の構造と働きを理解するのが目的です。生徒たちはリアルな解剖を行うことで、実験にはある程度のスキルや技術が必要だということにも気付きます。解剖を通じて医学に興味を持ち、医学部進学を目指す生徒も出てきます」(中田校長特別補佐)
この他、物理ではスピーカーの製作が行われ、地学では地形・地層の野外観察などが行われる。知的好奇心を刺激するものが多数用意されており、生徒たちはこうした体験を伴った実験や観察を通して、クリティカルシンキングの方法を身に付けていくのだ。
社会科総合学習に始まり、幾何学におけるロジカルシンキング、理科におけるクリティカルシンキングの学びで、生徒たちは時代が求める「新しい学力」を獲得する。
近年、海城からはハーバード大学現役合格者や、国際数学オリンピックの銀メダル受賞者を輩出。23年度の東大合格者43人、国公立大学医学部の合格者52人という実績も、こうした「新しい学力」のベースの上に築かれている。