累計50万時間超の時間創出と業務品質の向上などを実現
藤原(続き) そこで、導入したのがRPA(Robotic Process Automation)です。RPAは、それぞれのパソコン内で業務を自動化するデスクトップ型と、クラウドサーバ上で業務を自動化するクラウド型の2種類に大きく分けられます。私たちが選択したのは、“野良RPA”の発生を防ぎ、統制・管理が行いやすいクラウド型でした。その中でもUiPath製品を選んだのは、RPAやAIに関する技術力の高さはもちろん、一つのプラットフォームでエンド・ツー・エンドの業務プロセスの自動化を推進できると思ったからです。
これまでに約500のワークフローを開発し、業務の自動化を進めてきました。具体的な効果としては、累計50万時間超の時間創出(23年3月末時点)と業務品質の向上、開発時間の大幅な短縮、業務プロセスの標準化、リスク管理の向上、働き方改革などが挙げられます。
トマ 弊社が提供している「UiPath Business Automation Platform(以下 Business Automation Platform)」では、業務の改善ポイントの継続的な「発見」から「自動化」、セキュアな「運用」までをカバーし、RPAだけでは成し遂げられない業務プロセス全体の自動化や効率化を支援しているのが特徴です。
RPAの技術を軸としつつも、業務プロセス全体を可視化する「UiPath Process Mining(以下Process Mining)」、全社のRPAを統制・管理する「UiPath Orchestrator」、RPAテストを自動化する「Test Suite」など高度な自動化を実現する製品ラインアップが当社の大きな強みになっています。
例えば、Process Miningは実際の作業ログから業務プロセスを可視化して課題を発見し、自動化や改善を行うツールです。先ほどのお話のように、信託銀行では多種多様な業務が発生し、マニュアルに記載し切れない作業も多くあります。しかし、Process Miningを使えば、一人一人がどういう手順で業務に当たっているかを可視化でき、リスク管理にも役立ちます。その結果、最も効率的で正しい業務フローが明らかになりますから、業務の標準化を進め、組織全体の業務効率を引き上げていくこともできます。
当社は世界に40以上のオフィスを展開するグローバル企業です。これまで世界中の何千もの企業と知見を共有し、共に課題を解決しながら成長してきました。お客さまからの情報のフィードバックが製品の改善につながっています。こうした10年以上の経験と知見がUiPathの「Business Automation Platform」には凝縮されています。
さらに今年からは「AI at Work」をコンセプトに掲げており、働き方のなかにどうAIを組み込み活用していくか?をテーマに、生成AIを含むAIを搭載した機能・製品群を次々に発表しています。
三井住友信託銀行
経営企画部
デジタル企画部 審議役 兼 デジタルオペレーションチーム チーム長
藤原裕三 氏(グループのDX戦略子会社「Trust Base」も兼ねる)
藤原 UiPath社は非常に研究熱心で、最先端のテクノロジーを取り入れて次々と製品化し、サービスインしています。これらの製品をワンプラットフォームで利用できる点にUiPath製品の大きな価値を感じています。RPAのメンテナンスやアップデートを任せられるのもメリットです。また、金融機関の業務は複雑な規制が適用される一方、正確さや迅速さも求められますが、こうした点にもしっかり対応していただいています。
AI搭載の「Communications Mining」でメール仕分け業務を自動化
――23年7月には日本で初めてUiPathの製品「Communications Mining」の試験運用を始めています。どのような課題や目的があったのでしょうか。
藤原 課題が露呈したきっかけは、コロナ禍によってリモートワークが導入されたことでした。お客さまの資産を管理している受託サービス部には、証券会社などからお客さま宛へのメールが1日におよそ1000通送られてきます。そのうち対応が必要なメールはわずか30通程度にすぎないのですが、それには全てのメールに目を通して後続処理を判断しなければなりません。約10人でこの業務を行っていますが、リモートワークになってコミュニケーションが取りづらくなると、誰がどのメールを担当するのか、その分担に手間取るようになったのです。次々とメールが送られてくるので近くにいて声を掛け合わないと、同じメールを2人が処理してしまうといったことが起きてしまうからです。
そのため、ITリテラシーの高い行員がメールを振り分けるツールを作ろうとしていたんですね。しかし、それではまた先ほど説明したような“野良ツール”が生まれてしまう懸念がある。そこでUiPathに相談したというわけです。
ソリューション本部 エバンジェリスト
テランドロ・トマ 氏
トマ 頂いた相談メールを読んだ瞬間に、最適なソリューションを提供できると確信しました。というのも、AIを搭載し、メール仕分け業務の自動化に最適な製品「UiPath Communications Mining(以下Communications Mining)」が日本でリリースされた直後だったからです。この製品は、当初は英語対応のみでしたが、先日日本語対応が段階的に始まることが発表されたばかりです。
Commnunications Mining は、自然言語処理の技術を使ってメールなどの文章を解析し、業務を分析・自動化するソリューションです。当社の製品「UiPath Document Understanding(以下Document Understanding)」によって、ExcelやPDF、Wordなどのドキュメントから自己学習によって文脈を理解し、必要な要素(パスワード、口座、金額など)を取り出してさまざまなフォーマットに自動入力することも可能です。
藤原 当行の「メール仕分け業務の自動化」では、Communications Miningでコンテキストを基にカテゴライズし、入力が必要な箇所は書類の解析ツール「Document Understanding」で自動入力しています。
非常に優れていると感じるのは、やはり、AIの自己学習能力です。微妙に表現や形式が異なるメールが混在しているのですが、AIが自ら学習を続けることによって短期間で精度が向上し、仕分けの処理スピードも速くなっていきます。