――実際、どのような効果がありますか。
藤原 現在は3カ月間の試行期間を終えて実際の運用の準備をしている段階ですが、担当者からは「作業時間が大幅に短縮された」「手作業によるミスがなくなり、正確性が高まった」といった声が次々に上がっています。
実際に運用が始まれば、作業工数の削減をはじめ、人為的ミスの低減、顧客満足度の向上などの効果が期待できるでしょう。私の感覚では、作業時間を8~9割は削減できそうな気がします。10人で行っていた作業を2人でこなせるようになるイメージですね。これは非常に大きい。
トマ すでに海外では多くの金融機関がUiPathのCommunications Miningを利用しています。海外の金融機関でも大量に送られてくるメールへの対応が課題となっていて、一般に全体の10%程度が対応不要といわれています。仮に、ある金融機関で1日におよそ1000通送られてくるメールボックスが500あったとします。メール仕分け業務の自動化によって対応不要な5万通のメールを分類・特定するだけでも、大きな業務効率化の効果が期待できるのは想像に難くないでしょう。
営業支援や商品開発、マーケティングにも利用できる
――Communications Miningは今後、どのように活用していきますか。
藤原 業務の自動化をどんどん進めていくと、徐々に自動化できる領域は狭くなっていきます。そうした中でも、Communications Miningの日本語対応が始まっていますから、自動化できる領域は大きく広がるのではないでしょうか。例えば、不動産の管理業務では、不動産管理会社から管理組合やオーナー宛てに日本語のメールが数多く送られてくるため、同じように「メール仕分け業務の自動化」を実現できそうです。
トマ Communications Miningは「メール仕分け業務の自動化」のような分類だけではなく、分析にも利用できます。例を挙げると、営業日報などに蓄積されたナレッジや、お客さまから届いた要望や問い合わせといったコミュニケーション情報を自然言語処理の技術を使って解析し、営業支援策の立案や新商品・サービス開発、マーケティングなどのヒントにすることができます。こうしたコミュニケーション分析と自動化の組み合わせを活用し、海外では500ものAIモデルを運用している金融機関もあります。
藤原 当行でも「ChatGPT」に代表される生成AIの業務への活用などを研究し始めていますが、そうした営業支援やマーケティングなどへのAI活用も積極的に進めていく方針です。
――「AI×自動化」の今後の展望についてお聞かせください。
藤原 当行では「ハイパーオートメーション」と呼んでいますが、今後もUiPathの「Business Automation Platform」を活用し、最新テクノロジーを取り入れながら入り口から出口まで業務プロセス全体の自動化を進めていきます。それによって、より多くの人材を付加価値の高い仕事にシフトさせ、経営課題の一つである生産性の向上を図っていくのが最終的な目標です。
トマ 引き続き、UiPathのAIと自動化技術を掛け合わせて新たな価値の創出に努めていきます。現在試験運用いただいているCommunications Miningによる「メール仕分け業務の自動化」のように、今後もお客さまと共に先進的なユースケースを作り、発信していきたいと考えています。
UiPathの「Business Automation Platform」は、海外の金融機関の導入実績が数多くあり、藤原さんにお話しいただいたように金融機関に特に求められる規制の順守や正確性、セキュリティーなどにもしっかり対応できます。日本の金融機関や、その他業界でもぜひ活用を検討してほしいですね。
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