クレスコの強みの一つは高い技術力。研究・開発の支援と促進を目指す「技術研究所」と、その成果を実際のビジネスへ導入・運用するための「先端技術事業部」を擁し、技術研究所では顧客との共同研究や、大学・研究機関との「産学連携」を活発に行っている。
その成果として、22年にAIによる医療現場の診断支援、未病対策、健康管理支援を行う、画像認識AIの画像分類根拠を可視化する手法の特許を取得。同年、JALと共同で、医療AI研究の知見を活用した「航空機エンジン内部検査ツール」の開発がスタートした(下記「技術力が未来への強み」欄参照)。
「技術研究所は長年医療分野で研究を続けてきましたが、 他の産業にも応用できるのではないかと可能性を探り、JALとの共同開発が実現しました。私がいつも社内で言っているのは、2、3年前の技術はすでに汎用化されており先端ではないということ。スピードが求められる業界なので、常に新しいことにチャレンジする意識を持っています」(冨永社長)
同規模のSIer(エスアイヤー)で、こうした技術研究所などの体制を持つ企業は少なく、技術力に関してはどこにも負けないというプライドを持っている。
社員同士で活発な
「勉強会」を開催
経営理念であるクレスコ憲章には、「クレスコは人間中心、実力本位の会社である」とうたわれている。新卒は毎年100人程度を採用し、研修を通してしっかりと育成する。
「採用ではどこかに特長のあるとがった人材を求めています。例えば技術に強い人、語学が堪能な人、コミュニケーション力にたけた人、企画力のある人。そのためユニーク採用(一芸採用)も実施しています。会社としては弱点を補うのではなく、個々の強みを伸ばしていきたいと考えています」と冨永社長は語る。
同社では、社員同士の「勉強会」が活発に開催されている。特にコロナ禍以降は、ウェブでの「朝活」が盛んに行われている。任意参加の就業時間前の勉強会だが、社員の参加率は高い。日々勉強しなければ時代のニーズに追い付けないという向上心がそうさせているという。
医療AIによる画像認識技術を
航空機に応用
クレスコの「技術研究所」では2016年から医療機関と連携し、AIによる眼科領域の医師の診断支援の研究をスタートした。19年には、正常な目と疾患のある目の光干渉断層計(OCT)画像を比較し、乖離の度合いを示す「スクリーニング機能」を実現、眼科医療機器の画像ファイリングソフトウェアに採用された。22年には、これらの医療AIで培った知見と、JALの持つエンジン整備の豊富なノウハウを掛け合わせた「航空機エンジン内部検査ツール」の開発がスタート。航空機エンジン内部には何百枚ものタービンブレードが存在し、その故障リスクを見分けるには整備士の長年の経験とそれに基づく技術が必要とされるが、このツールを使用することで、不具合の発生を予測して事前に整備処置を行う予測整備へつなげることがよりスムーズになる。またベテラン整備士の持つ高度な知見や技術を若手整備士へ継承するJAL内での教育にも、同ツールが活用される予定だ。