国際標準化を利用した
オープン&クローズ戦略
国際標準とは、新技術や新製品の普及のための国際的な取り決めのことで、代表的なものに、ISO(電気分野以外の国際標準)規格やIEC(電気分野の国際標準)規格などがある。
所長室
松本満男氏
特許と国際標準の違いについて、前国際標準化機構(ISO)副会長で正林国際特許商標事務所所長室の松本満男氏はこう説明する。
「海外マーケットを目指す場合、基本的に特許は国ごとに取得する必要がありますが、国際標準は一度規格として認められれば、世界中に影響を及ぼすことができます。特許の取得が局地的な点だとしたら、国際標準化は全世界を“面”として捉えることができます。そして、特許と国際標準化を組み合わせることで、知財のオープン&クローズ戦略を実行し、新市場のルールメーカーになることができます」
国際標準化で新市場を創造した例として、松本氏は1994年にデンソー(現デンソーウェーブ)が開発した「QRコード」の知財・標準化戦略を挙げる。もともと製造工場の作業指示や部品管理のために開発されたものだったが、今や「QR決済」は主要な電子決済ツールとなって全世界に普及している。ではデンソーはどのようにそれを成し遂げたのか。
同社はQRコードの仕様を無償で公開して規格化、生成装置の特許も開放(オープン)して普及させた。その一方で、読み取りシステムを有償(クローズ)にした。知財の一部をオープンにすることで仲間を増やし、新たなマーケットを創造したのだ。2000年には、ISO/IEC18004の規格を制定して国際標準化も果たしている。
「大手企業に限らず、ベンチャー企業でも尖った技術やサービスを持っているのなら、特許と国際標準化を組み合わせて国際市場を狙っていくべきだと思います。ただし特許は比較的早く取得できますが、国際標準化は各国のコンセンサスが必要で交渉力も求められるため、仲間づくりを含めて時間がかかります。特許で勝っても標準化で負けるというケースもあり、どちらをどのタイミングで進めていくかがとても重要になります」(松本氏)
正林国際特許商標事務所は、国際標準化に向けてクライアント企業の知財戦略を立案する。具体的には、独自のスタンダードランドスケープ®を用いて国内外の標準の分析・調査を行い、その結果に基づいて、クライアント企業が開発した知財のオープン&クローズ戦略を提案していく。最終的には、新市場を創造するための新規格の内容を設計し、国際標準化機関の中で合意を形成しながら、ISO/IEC規格などの開発を目指す。
新市場のルールメーカーを目指す企業にとって、同事務所は“市場共創のための規格開発パートナー”として、大きな力を与えてくれるはずだ。