マネージャーに多いバーンアウト、ウェルビーイングを育む必要性

 次にワークフォースのトレンドを見ていこう。人材不足は世界的な課題だが、今回の調査では、意外にも多くの働き手が「現在の雇用主の元で働き続けることを考えている」(73%)という結果が出ている。

 退職理由のトップは給与だが、一方で職場に留まる理由としては弱く、働き手が現在の雇用主に満足している場合、給与はその職場に留まる理由の9位まで下がる。働き手が求めているのは、自らのスキルアップと組織内で昇進の機会が与えられることなのだ。

 また22年以降、雇用主がスキル開発に効果的な投資をしている、と回答する働き手が増えている。さらに「自分の現在のスキルが他の業界にも転用できる」と信じている働き手の割合は56%に達している。最も自信のあるのはホワイトカラーと技術ワーカーで、業界でいうと、テクノロジー、プロフェッショナルサービス、金融サービスの順になる。

「日本の場合、転職がうまくいかない人は、マーケットにおける自分のスキルのバリューがきちんと把握できていないケースが多いのではないかと思います。日々のオペレーションに追われて新たなスキルを身に付ける余裕もなく、仕事が終わった後に、何かを学ぶというマインドをなかなか持てない。今後、ますますリスキリングの重要性が高まっていくのは確実です」

 気掛かりな調査結果も出ている。それがバーンアウトの数値だ。バーアンアウトを経験した働き手の割合は65%にも及び、特にマネージャーは他のどの職務レベルよりもバーンアウトが多くなっている。バーンアウトの三つの理由は、「働き過ぎ」「リーダーのサポート不足」「レイオフ後のより大きな責任」となっている。

 バーンアウトを防ぐシンプルな方法は、定期的に休暇を取得することだが、年次有給休暇の完全消化を雇用主から奨励されていない、と答えた働き手の割合は78%となっており、割り当てられた休暇を完全消化した働き手の割合も55%にすぎない。ちなみにバーンアウトの比率が高いトップ3は、スイス、オーストラリア、ブラジルで、いずれも生成AIの導入が早い国という特徴がある。生産性を重視して、アグレッシブな働き方を課している国や企業ほど、バーンアウトは多くなる傾向があると考えられる。

「組織は、働き手のウェルビーイング(心身共に健康で幸福な状態)を育む必要があります。日本の労働時間は長いという印象がありますが、労働日数や労働時間を比較すると、海外と比べて特に長いというわけではない。海外のワーカーは、意外と仕事と遊びの境目がなく、むしろエンゲージメントが高く、仕事を楽しむ姿勢があります。仕事をするということは、人と会って話をして、共感したり意見をぶつけ合ったりすること。今後は、テクノロジーが人間の身体能力・知覚などを増強・拡張させる一方で、リーダーシップや共感力、感情的知性(EI)などのソフトスキルの重要性が高まり、独自のヒューマンスキルを育てることが必要になってくると思われます」

 アデコのビジョンは “「人財躍動化」を通じて、社会を変える”こと。そのため、新しい仕組みやプラットフォームを創造し続けている。最近では経済産業省「リスキリングを通じたキャリア支援事業」の補助事業者に採択され、デジタル分野を中心としたリスキリング講座を提供し、新たなスキルの獲得をはじめとする能力開発をサポートしている。

 平野取締役は「日本もいずれ終身雇用がなくなり、労働市場の流動性は高まっていきます。また生成AIなどテクノロジーの進化で、すでに若い世代を中心に仕事の効率化が進んでいます。優秀な人が持つスキルを多くの企業が共有し活用できるように雇用形態が多様化したり、働く一人一人が仕事を楽しむことができて、人も組織も躍動していけば、日本のビジネスはさらに発展するはずだと考えています」と、日本の「人財躍動化」に向けて熱い思いを語った。

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「未来のグローバルワークフォース」(Global Workforce of the Future)のレポート概要
https://www.adeccogroup.jp/power-of-work/314