団地をよみがえらせるには
コミュニティ再生が鍵に
尾神充倫 執行役員
JSの基幹事業は、UR都市機構の集合住宅の管理やリニューアル、修繕工事などだが、近年は団地の暮らしをデザインする「ライフサービス事業」に注力。
「昭和40~50年代に造られた大規模団地では、設備の老朽化や陳腐化に加え、急速に進む高齢化やコミュニティの希薄化などの課題があります。これら団地の課題は日本社会の縮図でもある。かつて憧れのブランドだった団地をいかによみがえらせるか。団地の住生活に寄り添いながら、新たな居住者を呼び込み、活動に広がりを持たせることが、団地エリアのコミュニティ再生に不可欠だと考えました。そのため16年から、『団地×コミュニティ拠点』の企画運営をスタートしたのです」
そう説明するのは、尾神充倫(おがみみつのり)執行役員。具体的には、若い世代も関心を持ちやすい「食」や「本」をテーマに、団地の内外から人が集まる魅力的な空間を用意し、多様な人々がつながる仕掛けを作っていく。理想の姿は、環境を「ひらく」、人が「あつまる」、仲間と「つながる」、活動が「ひろがる」という4ステップで地域コミュニティを活性化させること。
特徴的なのは、社員自らがコミュニティマネージャーとなって、地域コミュニティの形成に深くコミットしていることにある。
拠点の第1号は、16年9月に多摩ニュータウン貝取・豊ヶ丘エリアにオープンした「J Smile 多摩八角堂」。JS所有の遊休施設をリノベーションし、時間貸しコミュニティスペース、べーカリーのパン販売・喫茶、地域連携イベントの会場などに活用されている。
地域一帯に広がりつつある「多摩ランタンフェスティバル」は地域のにぎわいや交流を生み出す
「八角堂を運営するには、地域のさまざまな立場の方々との共同作業で進めていくことが基本になります。意識しているのは、地域に開かれた場所であるということ。高齢化が課題の多摩ニュータウンですが、周辺地域の方々に自由度の高い使い方をしてもらうことが、地域コミュニティの活性化につながると考えています」(柴﨑達也コミュニティマネージャー)
19年には「夜が暗い」という住民の声から「多摩ランタンフェスティバル」を発想。市の後援も得て反響の高いイベントに成長した。
「日常的なコミュニティスペースの利用も増加傾向にあります。JSのイベントを通じて八角堂を知り、自ら利用する方も増えているようです。地域コミュニティが八角堂を中心に活性化していく好循環が生まれています」(竹場奈津子コミュニティマネージャー)