ベストオーナーは
意外なところから現れる
カーブアウトはプロセスごとにさまざまな課題解決テクニックを要し、専門家のアドバイスが不可欠です。
おっしゃる通り、我々M&Aアドバイザーの腕の見せ所だといえるでしょう。単なる仲介でなく、長年の経験で蓄積したノウハウを活かしたサポートが求められます。
近年、企業のM&A支援を行っている中で感じているのは、カーブアウト案件が多様化していることです。大中小と売却案件の規模もさまざまになり、それに伴って買い主も多様化しています。そこで重要になるのは、「売却先の可能性を狭めない」ことです。ベストオーナーは意外なところから現れるからです。
たとえば当社が事業売却先の選定と契約支援を行ったある化学品メーカーでは、カーブアウトでベストオーナーと出会うことができました。過去に買収したものの期待したシナジーを得られなかった子会社(工業用ゴムメーカー)を、タイヤのリサイクル事業拡大を目指すリサイクル会社に売却し、売り主と買い主双方がウイン・ウインとなるカーブアウトが実現したのです。これは同業や隣接分野にこだわらずにベストオーナーを求めたことが功を奏しました。
当社はフロント社員600人が全国を走り回り、独自の情報とネットワークを構築しています。ファンドも含めて幅広い買い主を紹介し、売り主の「買い手が見つかるか」という不安を解消しています。
そもそもカーブアウトが成功する企業と、そうでない企業の違いはどこにあるのでしょう。
成功する企業の特徴は「明確な成長戦略がある」ことです。成長領域が特定できていれば、おのずとノンコア事業も見えてきます。
カーブアウトは売って終わりではありません。むしろ売却後の戦略が重要で、売却で手にしたキャッシュをいかに自社の成長のための投資に使えるかが問われます。カーブアウトは、売り主と買い主の双方にとって「成長の基盤」を手に入れるためのものだからこそ、黒字でベストオーナーに譲る戦略的売却が必要です。
カーブアウトを成功させる企業には必ず、覚悟を持って成長戦略を実行できるリーダーがいます。我々は、世に眠る優れた事業をベストオーナーへと橋渡しすることを使命としているからこそ、しがらみを恐れずに成長に貪欲なリーダーとの伴走を続けていきます。
◉企画・制作|ダイヤモンドクォータリー編集部
◉構成・まとめ|江口陽子 ◉撮影|佐藤元一