競技力向上のために
個別プログラムを開発

――具体的に、どのような研究を進めているのでしょうか。

日本電信電話
研究開発マーケティング本部
アライアンス部門長
工藤晶子 取締役 執行役員
1990年に日本電信電話入社。広報室長などを経て、2023年6月より現職。スマートシティ有限責任事業組合 職務執行者

工藤 健康・医療、遺伝子検査などのビッグデータ解析を行っている当グループのNTTライフサイエンスが、これらのデータをスポーツや医学に有効に活用するための取り組みを順天堂大学と一緒に進めています。

 スポーツの世界にもたくさんのデータがありますが、実際に有効活用されているものはごくわずかしかありません。

 この取り組みでは、遺伝子タイプおよび選手の特性などのデータを把握し、仮説に基づく個人別のトレーニングプログラムを提供、その有効性について評価を行います。個人に最適化されたプログラムは、競技力の強化やスポーツ外傷・障害の予防、女性特有の課題の解決など、さまざまな活用方法が生まれるはずです。

鈴木 アスリートとしての私自身の経験を振り返ると、競技力を高めるため「どこまで自分を追い込むか」ということと、けがをしないように「どこまで力をセーブするのか」ということのせめぎ合いでした。

 そうしたバランスの取り方を含め、勘や経験ではなく、エビデンスに裏付けられた個別プログラムの提供ができれば、スポーツ選手の競技力向上やスポーツ外傷・障害の予防に大いに寄与しそうですね。

順天堂大学
スポーツ健康医科学推進機構
鈴木大地 機構長・教授
1988年ソウル五輪100m背泳ぎ金メダリスト。2015~20年、初代スポーツ庁長官を務める。世界水泳連盟理事、日本水泳連盟会長

工藤 現在は、個別プログラムの開発に向けたデータ分析を進めているところです。その分析結果を基に効果的なプログラムを提案し、チームで活用してもらいます。もちろん、今までのやり方や考え方を否定するものではありませんので、チームや選手の意向に寄り添いつつ、実践と検証を進めていきます。

鈴木 非常に楽しみですね。スポーツ選手にとって、けがなく、最大のパフォーマンスを発揮できるのは何よりのこと。さらに引退後も健康な人生を送れるのなら、言うことはありません。

工藤 今回の共同研究の狙いは、まさにそこにあります。

 アスリートの競技力向上やスポーツ外傷・障害の予防が当面の目標ですが、NTTグループとしては、その先のヘルスケア領域、つまり人々の健康な暮らしを実現するデータ活用の方法を提案していきたいと考えているのです。

 その意味でも、スポーツと医学の両面で最先端の研究を行っている順天堂大学とコラボレーションできたことは、非常にありがたく感じています。