「コンシェルジュ」の意外な効果
実際、利用者の評判は総じて高いという。その理由は明白で、病気のリスクが具体的に数字で示されるために、生活習慣の改善に積極的に取り組む強い動機付けになるからだ。
予測する病気のリスクは「4年以内の心筋梗塞・脳卒中発症リスク:50%」や「5年以内の認知症 発症リスク:65%」などというように、かなり“現実味のある数字”で示す。加えて、先述したように、コンシェルジュが個人個人に合わせたアドバイスを行うことで、無理なく生活習慣を見直すことができる。実際、これまでに多くの効果が報告されており、データとして蓄積されつつあるという。
生活習慣の改善においては、「4~5年以内に発症する」などという“時間軸の見える化”の効果も大きいが、より効果を高めているのは、具体的な生活習慣の改善や病気予防の対策をアドバイスする「コンシェルジュ」の存在だ。
実際、ハイリスク判定が出たものの「病院には行きたくない」と渋っていた利用者が、コンシェルジュの強い勧めによって、病院を受診したところ、そのまま放置すると命にも関わるような体の異変が発見されたというエピソードもあり、後に担当のコンシェルジュはものすごく感謝されたという。
やはり無症状でも、タンパク質レベルでは変化していることがはっきり分かれば、行動を変えるための大きなきっかけになり得るのだろう。
和賀CTOは「この検査で分かることは限定的ですが、健康相談を受けて医療機関を受診することで、プラスアルファのことも見つかるというケースも少なくありません」と副次的な効果も説明する。
NECグループが本気で取り組む理由
和賀CTOによると、情報通信分野が事業の中核であるNECグループ内では、新規事業とはいえ、“飛び地”ともいえるヘルスケア分野のフォーネスビジュアス事業については、かなり慎重に議論され、検討されたという。
「そもそも事業として成り立つかどうかに加えて、ここで徹底的に重視されたのは、本当に人の役に立つのか、NECグループが事業展開する上で標ぼうする『社会的課題の解決に貢献できるか』ということでした。病気を予防して健康的な社会を実現するというウェルビーイングの観点と、病人を減らして将来的な『社会保障費の増加』を防ぐという観点からゴーサインが出ました」
フォーネスライフがもともと研究機関(B2B)に展開していたタンパク質測定技術を、今後は一般向け(B2C)に積極的に展開するのも「誰も病気にならない未来。誰もが自分らしく生きられる社会へ。」という同社のビジョンに沿った社会貢献のためであり、NECグループとして本気で取り組む方針だ。
「病気のリスクをお伝えし、生活習慣を変えることで、病気を大幅に減らすことができるかもしれない。行動を変えれば、健康的に過ごせる未来がある。そのメッセージを広げていくのが、私たちのやるべき仕事だと思っています」
フォーネスライフでは、今後、予測できる病気の数を、がんの種類を増やすことなどで、徐々に増やしていく方針。将来的には、50以上の病気を判定できるようにする。また、より確実に生活習慣を変えられるような仕組みづくりも検討していく考えだ。
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