日本電気(NEC)のグループ会社、フォーネスライフが血中タンパク質測定技術とビッグデータ解析技術で「数年後の病気のリスク」を予測し、生活習慣の改善を促すヘルスケアサービスを一般向けに始めた。NECグループが新規事業としてこのヘルスケアサービスに本気で取り組む理由と、このサービスの特徴について、フォーネスライフの和賀巌CTO(最高技術責任者)に話を聞いた。
和賀 巌
チーフテクノロジーオフィサー(CTO)
NECソリューションイノベータ パブリック事業ライン シニアフェロー
東北大学大学院医学系研究科客員教授
東北大学産学連携機構客員教授
「病気の8割は生活習慣に起因」。深夜のスマホと発がんリスクの関係は?
「現在、私たちの病気の8割は生活習慣から生まれています(※1)。実際、日本人に定着した欧米型のライフスタイルは、脳卒中などの循環器系疾患や認知症、幾つかのがんなど、多くの慢性疾患の原因になっています」と語るのは、NECのグループ会社、フォーネスライフ(NECソリューションイノベータの全額出資子会社)の和賀巌CTOだ。
例えば、ここ十数年間で一気に普及したスマートフォンは、現代人の生活を大きく変えた。
「深夜にブルーライト(人工光)を浴びること。例えば、スマホを見るなどの生活習慣は、明らかに健康にはよくありません。実際、睡眠時間が短くなり、発がんと心疾患リスクが上がり、肌は衰え、太りやすくなって、プレッシャーにも弱くなることが、138万人を対象としたメタ解析論文で報告されています(※2)」
また、コロナ禍以降はテレワークが普及し、仕事の仕方はもとより、人とのコミュニケーションも大きく変わった。以前よりも、親戚付き合いや人との会話が減ったという人は少なくない。
「孤独な状況では死亡率が26%上昇します。孤独な人々は64%も多く、認知症を発症するという研究結果もあります。日本は今、一人暮らしの方がものすごく多いですよね。一日中誰とも口を利かない生活をしていると、肺がんなど、幾つかのがんのリスクが高まるということも分かっています(※3)」
他にも「糖質過剰の食事は、がんや循環器系疾患での死亡リスクを22%増加させる(※4)」「1日11時間以上椅子に腰かけることは、4時間のグループに比べ死亡率を40%上げる(※5)」など、疾患リスクと生活習慣に関する論文は世界中で日々蓄積されている。
現代人の多くの生活習慣が「病気のリスク」となる――。ならば、逆に生活習慣を改善さえすれば、病気のリスクも大きく減らせるはずである。
そこで、フォーネスライフは2021年7月から、少量の血液から約7000種類のタンパク質を測定し、「数年後の病気のリスク」を“予測”して生活習慣の改善をサポートし、病気を未然に防ぐための対策をするというヘルスケアサービス「フォーネスビジュアス」を開始した。
一体、どのような仕組みで「数年後の病気のリスク」を予測することができるのだろうか。次ページ以降では、フォーネスビジュアスの特徴である血中タンパク質測定技術やサービスの具体的な内容、NECグループがこのヘルスケアサービスに本気で取り組む背景などについて詳しく解説していく。