【将来性は?】
医療関連の製品をスタートアップと共同開発していく
23年度は、“巣ごもり需要”の反動によって売上高が中計の目標を下回ったが、業績は徐々に回復。主力のゲーム機、自動車に続く新たな領域への挑戦によって、成長を加速させている。
新領域の中でも、特に力を入れているのが医療・ヘルスケア領域だ。以前から、筋電や心電などを測定する生体電極は提供してきたが、その技術を応用し、筑波大学発のスタートアップ企業との共同で、睡眠時の脳波を計測する電極シートを開発。量産化を実現した。
別のスタートアップ企業とは、家庭で簡単に尿検査ができる、電気化学センサーの開発を進めている。
今後も、こうしたコラボレーションなどを通じて、医療・ヘルスケア領域のビジネスチャンスを広げていく方針だ。
さらに、EVの充電器向けに抵抗器を供給する計画も進行中。世界有数の「EV車大国」となった中国のメーカー向けに、現地工場から供給する構想を描く。
このほか、台風や線状降水帯などの発生時に、河川の水位を測定する水位センサー、土砂崩れの位置や、土中の水分含有量を測定する回路など、災害対策に役立つセンサー等部品についても実証実験に協力している。
新領域向けの開発を加速させるため、27年完成予定の新本社ビルに環境の整った研究開発エリアを設置する。新たなセンサーが、また次々と生まれそうだ。
新本社ビルが27年に完成予定
帝国通信工業は、神奈川県川崎市にある本社ビルを27年秋ごろまでに建替える。すでに解体工事のための敷地内移転が始まっている。
広大な敷地内に立つ計11棟の建物を1棟に集約。鉄骨造4階建て、延床面積約8200㎡の巨大なビルが完成する。「サステナビリティを体現する本社」をコンセプトに掲げ、環境や防災に配慮した建物となる予定だ。
同社はこの新本社ビルに、新たな研究開発拠点を設ける。効率よく研究開発ができる設備や環境を整えることで、エレメント技術を深化させ、新たなセンサーの開発を加速させる考えだ。
新領域への挑戦で業績を伸ばし、その利益を新本社ビルの建設や、研究開発体制の強化、株主還元に充てていく。
エレメント技術を中心にさまざまなセンサーが生まれていく
帝国通信工業株式会社
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