今までになかったビジネスやサービスを世の中に届けることがベンチャー企業の存在理由であるならば、霞ヶ関キャピタルの事業哲学はまさにそれに当たるだろう。冷凍冷蔵物流施設に特化した物流不動産デベロッパーとして、市場に新たな価値を提供し続ける同社の“新しさ”とは──。
物流業界で「霞ヶ関キャピタル」の社名を頻繁に聞くようになったのは、ここ1~2年のことだ。2022年9月に千葉県市川市で初の賃貸型冷凍冷蔵倉庫を開発して以降、異例ともいえるスピードで次々と冷凍冷蔵物流施設を生み出し、業界内での存在感を一気に高めた。
同社は、もともと東日本大震災で被災した商業施設の再生事業を手掛けるために11年に設立。その後、社会課題を抱えた分野への参入を繰り返し、再生可能エネルギー、ホテル、ヘルスケア施設などに、着実に事業領域を広げてきた。
誰も挑まなかった事業分野に参入
不動産開発事業本部管掌
ロジスティクス事業本部長
杉本 亮氏
その同社が、冷凍冷蔵物流施設の開発に乗り出した背景にも社会課題解決に対する思いがあった。杉本亮・取締役副社長ロジスティクス事業本部長は「冷凍食品の需要が拡大しているものの、肝心の倉庫が不足する状況が続いています。また、オゾン層破壊の原因とされるフロンの規制が強化され、30年までに冷媒設備の脱フロン化が求められ、倉庫の更新が思うように進まない『冷凍冷蔵業界の2030年問題』が大きな課題になっています。そこに当社が参入する社会的意義があると考えました」と説明する。
さらに「物流不動産デベロッパーとしての認知度が低い中で、先行する大手と真っ向勝負をしても勝つことはできません。大手がやっていない分野に参入する必要がありました」と後発としての冷静な読みもあった。すでにドライ(常温)の物流不動産市場は競合過多になっている一方、マルチテナント型の賃貸型冷凍冷蔵倉庫は、事業化の難しさもあって、どこも手掛けていないという状況だった。
その戦略はものの見事に当たった。「LOGI FLAG COLD(ロジフラッグコールド)」のブランドで展開する施設には、業界内で高い知名度を持つ有名物流企業が相次いでテナントとして入居し、「当初は懐疑的だったマーケットの空気が一変しました」と杉本副社長は振り返る。