毎日決まった時間に定量の出荷がある倉庫ならば、大掛かりな自動化機器の方が処理能力は高い。しかし、ほとんどの物流現場は曜日や季節などによって出荷量に大きな波があり、その変数が自動化を阻む要因ともなっている。

 そのため、需要の変動によって機器を簡単に増減できるような可変型のシステムが重宝されるようになってきた。特に投資余力に乏しい中小規模の倉庫にとっては、いかに最少コストで自動化・省力化を実現できるかが倉庫オペレーションの成否を握る。

 辻常務は「そのためには、倉庫作業全てを無人化するような大掛かりなシステムではなく、人とロボットとがバランスよく協働できるライトアセット型のシステムがより現実的です」と指摘する。

東芝の総合力が導く。人とロボットが協働する物流システムとは東芝
常務執行役員 兼
東芝インフラシステムズ 取締役常務
辻 巌

 さらに、ハード単体の優劣ではなく、いかに機器の組み合わせや運用で違いを生み出せるか──。そこに東芝グループとしての強みがあるという。

「RDC(研究開発センター)におけるシミュレーション機能や数値解析技術など、東芝には運用ベースにおける最適解を見つけ出すソフトウエアの力があります。このグループとしての総合力を結集させることで、物流システムの設計・構築などインテグレーション機能における差別化につなげることが可能です」と語る。また、SBS東芝ロジスティクスなど関係の深い物流会社から実運用ベースでの課題などについてフィードバックを受けることで、システムインテグレーターとしての総合力を高めている。

中国ロボティクス企業との提携で事業拡大へ

 そうした中、同社は2023年、中国の蘇州市に本社を置くロボティクス企業、Mushiny(ムシャイニー)社と戦略的業務資本提携契約を結び、連携して物流システム事業を拡大していく方針を打ち出した。

 ムシャイニー社は、16年設立の新興企業。Amazonでロボティクスに関わった人材が創業メンバーに名を連ね、AGVや3次元ソーターなど豊富な製品ラインアップを持つ。高い製品開発力に加え、ベンチャー企業ならではのフットワークの軽さも特徴で、米国など海外に販路を広げている。

 辻常務は「当社のソフトウエアの優位性をアピールしていくためにも、AGVをはじめとするムシャイニー社の優れたハードを安価に提供してもらえる体制が整ったことは大きい」として、“ハード+ソフト”の組み合わせによって強みを訴求していく方針を打ち出している。

 今後は、東芝インフラシステムズが独自開発したピッキングロボットや荷降ろしロボット(デパレタイザー)との組み合わせによるソリューション提案に力を入れていくほか、倉庫運用管理システム(Warehouse Execution System=WES)によって倉庫作業を統合管理し、人とロボットのベストミックスによる最適物流システムの構築を支援していく。

 東芝インフラシステムズは、今年9月10日から13日までの4日間、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催される「国際物流総合展2024」に、ムシャイニー社と共同出展することを決定。ムシャイニー社のAGVや天井の高い倉庫に対応した棚搬送システムなども展示され、両社の高い物流ソリューション力を体感できるようになっている。

●問い合わせ先
東芝インフラシステムズ株式会社
〒212-8585 神奈川県川崎市幸区堀川町72-34
TEL:044-576-6700(代表)
https://www.global.toshiba/jp/outline/infrastructure/business-introduction/security-automation.html