変化対応のネックとなっているのが、先に水谷社長が指摘した「多様性」と「リアルタイム性」である。
「例えば、全ての顧客に同じ内容のメールを送ってしまったりするのが典型例です。情報がパーソナライズされていないので、受け取った顧客にとってはまったく価値がなく、迷惑メール扱いされてしまう。製品・サービスに魅力を感じてもらうどころか、逆にブランドイメージを損ないかねません。しかも、欲しいタイミングで情報が届くわけではないので、大量のメール配信数に対して、購入に結び付かないという残念な体験が生じます。一人一人の顧客の感情に寄り添い、最適な体験を、いかにタイムリーに届けるかが重要なのです」と水谷社長は語る。
「4つのR」に対応したパーソナライズの実現
では、顧客エンゲージメントを高め、ブランドへの愛着や製品・サービスの購入に結び付けるためには、どのようなアプローチが求められるのか。
水谷社長が提言するのは、4つのRight(4R)に対応したパーソナライズ(個別最適化)の実現である。
「(1)適切な相手(Right User)に、(2)適切なタイミング(Right Timing)、(3)適切なチャネル(Right Channel)で、(4)適切なコンテンツ(Right Content)を発信すること。そのためには、社内のいろいろなシステムに散在する同一顧客のデータを一元化し、その顧客の行動をリアルタイムに捕捉した上で、適切な提案ができる仕組みを構築するのが有効です」
水谷社長によると「Braze」は、まさにそんな「4つのR(4R)」に対応したカスタマーエンゲージメントプラットフォームだという。
11年に米国で創業したBrazeは「モバイルファーストの時代」に対応したカスタマーエンゲージメントプラットフォームを開発・運営するテクノロジー企業だ。20年7月に日本市場に参入し、その独自技術を使ったプラットフォームサービスは小売りや外食、アパレル、ECプラットフォーム、エンターテインメント・ゲーム、金融など幅広い業界に導入が進んでいる。
同社のプラットフォームの特徴は、一人一人の顧客に関する属性情報、行動情報などを全て統合し、リアルタイムな行動を基に製品・サービスの情報発信や、プロモーションなどの施策が打てる点にある。
実際、米国のある大手ハンバーガーチェーンは、顧客が競合先チェーンの店舗に近づくと、即座に顧客のスマホに自社看板商品の格安クーポンを配信するというユニークなキャンペーンを行い、これが各メディアで報じられ、大きな話題となった。実はこれ、「Braze」の技術を活用したものだ。
「顧客の行動を把握してから、秒以下で施策を展開するリアルタイム性や、顧客の感情の起伏や嗜好の変化に対応し、その都度異なるオファーが展開できるパーソナライズ性、店舗、ウェブ、アプリなどの異なるチャネルで一貫した体験を届けられるマルチチャネル性を備えているのが、他のプラットフォームとの大きな違いです」と水谷社長は説明する。
日本国内での事例として水谷社長が紹介したのが、ある石油元売り会社の事例だ。