はやぶさ開発秘話に見る
ものづくりの進化の条件
住友重機械は1888年、別子銅山(新居浜市)で働く人たちの負担を軽減するべく、鉱山の機械や器具を製作・修理する「工作方」として創業した。以来、同社ならではの価値ある技術や製品、サービスを提供することへの矜持と、周囲のニーズを正確に捉える力によって未来を開き、持続的な成長を遂げてきた実績がある。
その一例が、小惑星「イトカワ」から岩石の微粒子をサンプルとして持ち帰ったことで知られる、小惑星探査機「はやぶさ」のサンプル採取機構の開発だ。
開発上の困難の一つは、サンプルを取り込む筒状の「ホーン」の設計にあった。未知の惑星でサンプルを採取する確率を高めるには、どんな構造にすればいいのか。たどり着いたのが伸縮自在なばね仕掛けの蛇腹構造だが、設計者はなんと、駅で売られていた「新居浜太鼓祭り」のお土産用のちょうちんをヒントにしたのだという。
衛星機器の最先端の設計ノウハウはもちろん、ちょうちんという身近なアナログ技術をも用いて宇宙の謎解明のニーズに応える――。住友重機械の成長の背景には、より良い未来に向けて独自の創意工夫を重ねるという、STEAM教育が培おうとする能力が確実にある(
「空飛ぶ靴」の着想も!
独創性重視の授業内容
だからこそ住友重機械は、やさしいミライの学校の“授業内容”にもこだわる。子ども向けワークショップなどの開発を手掛ける団体であるCANVAS(運営:ラフ&ピース マザー)の力を借り、子どもたちの思考力を刺激し、独創性を引き出すプログラムに仕立てているのだ。具体的な流れは、以下の通りである。
(1)「やさしいミライ」について考えるため、
(2)「困りごとがありそうな街の人たち」や「
(3)やさしいミライを深掘りし、時に人工知能(AI)
(4)出来上がった作品を発表する。
結果は上々だ。大人では思い付かない斬新な発想が続々と出ており、子どもたちへの効果は予想以上に大きいという。例えば23年は、運動靴とプロペラによって、「空飛ぶ靴」が“発明”された。24年も、動物アレルギーの人に動物とコミュニケーションを深めてもらうための、「仮想現実(VR)×触感再現」技術が“開発”されている。
「この反響を後押しに、創業の地である新居浜以外でも、やさしいミライの学校を開催していきたい」(荒居執行役員)。住友重機械は「こだわりの心と、共に先を見据える力で、人と社会を優しさで満たします」というパーパスの下、やさしいミライのきっかけづくりに今後もまい進していく。
荒居祐基
執行役員企画本部長
【参考情報】
「やさしいミライの学校」特設サイト
住友重機械工業株式会社
〒141-6025 東京都品川区大崎2-1-1(ThinkPark Tower)
TEL:03-6737-2332
URL:https://www.shi.co.jp/