2023年の公式データによると、農村部住民の年間可処分所得は1人当たり約3000ドル(約47万円)で、7000ドル超の都市部住民の半分に満たない。
米スタンフォード大学の研究者、スコット・ロゼル氏とナタリー・ヘル氏は2020年の著書「インビジブル・チャイナ」で、「都市と農村の分断が公的な政策によって定着し、法律で成文化されているのは中国だけだ」と指摘した。
留守児童の数は中国が世界で最も多く、2020年の公式データによると6700万人に上る。こうした子どもが直面する困難や悲劇は広く知られている。
中国北部の村で2024年3月、13歳の少年がクラスメートたちに殺害される事件が起き、留守児童の問題が改めて注目された。被害者も加害者も、両親は遠く離れた場所で働いていた。
30代半ばのウエートレス、ワン・ヤーフイさんはこの殺人事件を知り、動揺した。ワンさんと夫は共に北京で働いており、2人の息子は内モンゴル自治区に住む彼女の両親に預けている。夫妻は年に2回は地元に帰って息子たちに会うよう努めている。それでも、ワンさんは教育に関し息子たちを適切に監督することは不可能だと感じている。上の息子は今10代で、「私と話したがらない」という。
北京の非営利団体が2020年に留守児童3501人を対象に行った調査によると、1割超が前の年に両親に全く会わなかったと答えた。約4分の1は、親からの電話は3カ月に1回しかないと答えた。
中国は2024年11月、留守児童の少女に対して彼女が11歳の時から強姦(ごうかん)を続けていた男を処刑した。1人で暮らしていたこの少女は16歳の時に自殺した。裁判所は処刑を発表するにあたり、「留守児童は保護者に十分守られず、標的になりやすい」と述べた。
中国の人気歌手、周深さん(32)は最近、国営新華社通信のインタビューで、両親の顔を見ずに育った心の傷について語った。「私の夢は、ちゃんと靴と服があり、空腹を感じずに学校に行くことだった」
中国の共産党指導部が人口動態の課題が明白になった後も産児制限を全面的に解除しなかった理由の一つは、制限がなければ農村部の家族で子どもの数が増えすぎ、貧困から抜け出せなくなる恐れがあると考えていたためだ。
米ジョージ・メイソン大学の社会学者、ジャック・ゴールドストーン氏は、農村部の家族はより多くの人手を農作業で必要とするとの昔からの常識が世界で変わりつつあると語る。
中国では出生数の減少が2024年も続くと予想されている。最新の公式データによると、1月~9月の婚姻登録件数は470万件で、前年同期比17%減少した。
中国の保健当局は10月、人々が子どもを持ちたがらない理由を把握しようと、農村部や小都市に特に焦点を当てた全国調査を開始した。同月に中国国務院(内閣に相当)は出生率を引き上げるためのさまざまな施策を発表した。この一環として各地の市当局に対しては、出産保険を出稼ぎ労働者に拡大するよう求めた。
チン・ジョウさんは、北京のあちこちで見かける黄色の制服を着た宅配ドライバーの一人だ。妻と貯金して、子どもを持つ前に出身地の山西省に戻ることを計画しているという。ジョウさんは30代前半で、子どもは「1人で十分だと思う」と語った。
チェン・パンさんも北京で宅配ドライバーとして働く。20代で、出身は湖南省だ。30歳になる前に結婚する予定はないとし、当面は北京でもっと稼ぐことだけを考えていると話した。
(The Wall Street Journal/Liyan Qi)
※この記事はWSJにて2025年1月7日 06:26 JSTに配信されたものです。




