3年がかりで
ゼロからの開発
ユーイングは扇風機や電気カーペットといった季節家電をはじめ、調理家電、工場で利用される測定装置など、幅広い家電・FA機器を製造するメーカーだ。企画・デザインから製品開発、製造、販売までを自社で一貫して行っている。多様な製品を作ってきた技術はあるが、水耕栽培のノウハウは全くない。開発はゼロからのスタートで、試行錯誤の連続だった。
研究員たちは大学教授にアドバイスを受けたり、文献を検証したりして研究を重ねていった。LEDの照射時間は文献では18時間とされていたが、実験の結果、16時間が最適と判断。また発芽時72時間はLEDを照射しない「発芽モード」を実験の中から生み出した。さらに植物の育成には微風が欠かせないと気づき、空気の流れをつくるファンを取り付けた。
種子キットの開発にも時間をかけた。市販の液体肥料や種子をユーザーに購入してもらうという考え方もあったが、手軽に飽きることなく継続できることを優先した結果、専用キットでの発売となった。現在もキットの開発を続け最終的には60種類を目標にするという。
販売に当たっては家電量販店ルートを中心に商談を開始。製品コンセプトには興味を持ってもらえたが、これまでにない商品だけに、担当バイヤーがなかなか決まらないという苦労があった。
そして今年3月にグリーンファームを発売。実際の利用者からは、「子どもが苦手な野菜を食べられるようになった」「孫と一緒に観察日記で楽しんでいる」といった声が聞かれるという。家庭だけでなく、幼稚園や学校、塾などからの問い合わせも増えている。
ユーイングではグリーンファームの中国展開も検討している。中国市場では、観察・観賞よりも、安全な野菜を食べる目的がメインになると読む。縦に3段積みできる仕様にしたのは、中国での使われ方を想定してのことでもある。
アイデアを出し合い
新商品のネタ探し
「ニーズがあるからモノを作るのではなく、“需要創造”が当社のマーケティングの原点です。新たな価値の創造のため、グループの総力を挙げて開発を行っています」と深田社長。
同社では一連の開発プロセス以外にも、研究所や技術本部、企画のスタッフが月に1度集まり、制約を付けずに「こんなモノ作りたい」とアイデアを出し合う商品化検討会を開催している。また、自社開発だけでなく他社製品のODM、他社への開発委託など、開発スタイルも柔軟だ。そうした自由な発想・手法の中から生まれたグリーンファームが今後、日本と中国で新たな市場を創造していく。