現場を“知らない”システムは定着しない

 技術を継承し、技術力強化の大前提となるのは現場の見える化である。

 日本の製造業では、これまでも現場に帳票や工程票を貼り出すなどして情報を共有化し、見える化に取り組んできた。

「見える化の目的は、現場の作業者を巻き込んで、自主的にQC活動を進めるように仕向けることです。そのためには見える化した情報を元に、マネジメント層と現場が議論できる距離感が大事になります」

 この見える化の仕掛けの一つがシステムの活用である。

 渋谷氏は「中小の製造業にとってシステム化以外のやり方もある」としながらも、活用のためにはシステムの特質を理解することが前提になると指摘する。

「システムは与えられたことしかできません。それだけに、考えて作り込んでおくことが大事。経営のためだけのツールでは、現場を動かすことはもちろん生かすことはできない。それを理解した上で、現場に適応させる工夫が必要になります」

 そのためにシステムインテグレータには製造業への深い理解が求められる。

「業種業態や企業風土によって、製造業の現場が求めているものは千差万別です。それを理解した上でシステムを構築、導入しなければ現場は使ってくれません」

 もちろんシステム導入によって現場も変わる必要があるだろうが、現場がシステムに合わせるのではなく、システムを現場に合わせることが大切だということだ。システム導入によって経営と現場の双方にメリットを得ている企業は、高い業績を残しているという。現場で使われるシステムの構築が、日本の製造業の現場力を高める大きな要素と言えそうだ。