ホスピタリティを追求し
ドライバーの「誇り」を醸成

──新卒ドライバーを採用するという取り組みで大変なことは。

藤森 これまで、タクシーのドライバーは、いろいろな職業を転々としてきた後にたどり着く「最後の職業」であるというイメージが強いと思います。そのためか、私たちが新卒の採用を始めたとき、新入社員のご両親の多くはタクシー会社への就職を反対していました。それだけタクシードライバーの社会的評価は低かったということです。しかし今、そのご両親は、子どもがこの会社に就職して良かったと言ってくださいます。ご両親もタクシーの仕事、kmが目指していること、そしてお子さまの成長する姿を目の当たりにし、以前のご理解から変化していることを実感しています。

──女性社員を増やしたいと考えているのはなぜですか。

藤森 私たちは今年から、新たな企業理念に基づいたkmのサービスのモットー「ホスピタリティ・ドライビング」を発表しました。私たちの「ホスピタリティ」は、お客さまをはじめ歩行者、他の運転者など交通環境を取り巻くすべての方々に対して、私たち自身の感性を活かして、「その場」「その時」「そのお客さま」に最善と思われることをして差し上げること、と定義しています。マニュアルを超えた心のこもったサービス、歩行者や他の運転者、住民の方々に対して、誠実なマナーで仕事をさせていただく、この繰り返しこそが業界の社会的評価を変革していくと信じてやみません。

 こうしたホスピタリティの実践に、より優れた力を発揮できるのが、女性だと考えています。相手の立場になって考え、細かな気づかいができる、これからは社会の中で、女性ならではの優しさや感性が発揮されるときを迎えていると感じています。

 そうしたことから、ドライバーに限らず、営業職や管理職に女性社員を増やしていきたいと考えています。

自らが考え行動できる社員は
いかにして生まれるか

──新卒入社のドライバーが管理職になることは可能ですか。

藤森 ドライバーから管理職へ、という道は常に開かれています。kmには、20余りのグループ会社がありますが、その社長のほとんどは、現場からの登用です。新卒社員の中にも、すでに管理部門の所属となり、管理職を目指している社員もいます。

 社会人になってからの3年間は吸収も早く最も成長する時期です。kmでは、この3年間で、「自らが考え」「自ら行動できる」自立した社員の育成に最も力を注いでいます。管理職を目指す社員に対して、幅広い知識を習得できるよう、簿記、メンタルヘルス、安全衛生、語学講習などの多彩な研修プログラムが用意されています。また、管理者養成のプログラムも30年以上続けています。

──今後の目標を聞かせてください。

藤森 東京のタクシーを世界一にすること。それが私たちの目標です。安全、安心、サービス、そのすべての要素を、世界でトップの水準にしたい、というのが私たちの強い決意です。

 そのためには、私たち一人ひとりがお客さまに「感謝」の気持ちを持つことです。その感謝の気持ちが、お客さまの笑顔に変わり、ドライバー自身の喜びとなる。その喜びが誇りとなり、業界変革していく力になると。ホスピタリティ・ドライビングの実践でお客さまに喜んでいただけることを思い描くだけで胸が高鳴ります。私たちの挑戦は、まだ始まったばかりです。

■第2回は8月5日公開予定です