ビジネス文書を管理できない理由

 ビジネス文書は、特定の目的を持って作成される。そのため、活用のハードルが低い。言い換えれば、高い費用対効果を期待できる。実際、ファイルサーバを設置して部門内活用を推進する企業は少なくない。

 だが、ITの進展によって流通量が急増するいま、例えばどんどんコピーを繰り返して作られたバージョン違いの文書すべてに容易にアクセスできないなど、ファイルサーバでは管理に限界があることが明らかになっている。

 こうした状況に陥ると、もはや改善は困難だ。内容に重複の多いビジネス文書を大量に管理することは、ITコストの増大につながる。また、ホワイトカラーは多くの時間を「情報探し」に費やしているといわれるように、生産性にもマイナスの影響が出る。この課題は解決に向かうどころか、近年は悪化の一途をたどっているようだ。

 リスク管理の面でも注意が必要だ。雇用形態が多様化するいま、社員と契約スタッフが同一のビジネス文書に接する機会も多く、社外パートナー等とのコラボレーションの機会も増えたことで、アクセス権限に関する問題も複雑化している。何らかのルールを設けたとしても、それを抜けもれなく実行することは簡単ではない。

ビジネス文書の管理ルール策定時に
考慮すべき4つの観点

 一般に、ビジネス文書の管理ルール策定においては、次の4つの視点が重要と言われている。

 第1に、標準とポリシー。文書に付けるタグの標準化、データ作成・廃棄のポリシーなどである。例えば、タグ付けの標準化ができていなければ、有用な文書は探しにくい。

 第2に、人と組織。誰が文書のオーナーか、誰にアクセスを許可するのかを明確にする。

 第3にプロセス。どのように文書を登録・変更・検索・破棄するのかを定義する。

 第4に評価と測定。どのような監査を行い、活用度を評価するのか。管理システムを導入したときの投資対効果も測定する必要がある。

 これらにもまして重要なのが、ビジネス文書を作成し日々使用する社員たちに、これらが「全社的なデータ資産」であるというマインドを形成することだ。これが、管理の仕組みを定着できるかどうかの決め手になる。

 それには、定着化に向けた工夫が重要だ。例えば、「いいね!」ボタンを設けたり、いま最も活用されている文書を表示したりすることで、より価値の高い文書を登録するよう心理的インセンティブを与える企業もある。