景気回復の兆しが見えつつあるものの、大学新卒者の就職はまだ厳しい局面が続きそうだ。そうした中で、早期のキャリア教育による学生の意識向上やインターンシップなどの活用によって社会の実際を知るなどのプログラム強化を進める大学が増えた。これらの取り組みに対し、学生はもちろんのこと、企業側からの評価も高まっている。
採用支援事業部
牧野和治 事業部長
大学選びに際し、卒業後の進路を重視する受験生や保護者は多い。この点について、「最近の就職活動の変化も理解していただきたいところです」と語るのは、さまざまな企業へ採用コンサルティング・アウトソーシングを行うレジェンダ・コーポレーション採用支援事業部・牧野和治事業部長だ。
長年、企業の採用活動を支援している牧野事業部長から見て、今春の新卒者は選考期間が短縮された影響を大きく受けているという。現在、日本経済団体連合会の「倫理憲章」で、採用活動の解禁は大学3年生の12月と定められている。前々年度までの10月解禁に比べ、2ヵ月遅くなった背景がある。「たとえポテンシャルのある学生でも、就職活動への準備が十分にできていなければ、苦戦を強いられたと思います」。
先日、2016年4月入社予定者は、さらに3ヵ月遅れて3年生の3月解禁が発表された。就職を希望する学生にとっては、ごく短期間で最大限の自己表現が求められることになる。
多様な人材を求める企業、
画一的になりがちな学生
では、企業などが求める人材像とはどのようなものだろうか。牧野事業部長は「社会人にふさわしい身だしなみや言動、コミュニケーション能力は当然の基礎として、責任感や物事をやりきる力、組織での対応能力を総合判断し、自社で活躍できる人材かを確認することは変わりません」とした上で、「最近、特に注目されるのが、グローバルに活躍できる力、リーダーシップ、そして論理的思考・判断力です」と説明する。こうした点を見極めるため、志望者1人にかける面接の時間は長くなる傾向にあるという。「従来、1回15分程度だったのが、30~40分かけることも少なくありません」。
この背景には、いわゆる就活対策の弊害もありそうだ。業界研究や面接対策を進めるほど、学生の対応は画一的になりがちである。一方、企業は新卒人材に多様性を求める。
「応募者の違いを見極めて適切に選考を進めるためには、面接時間が長くならざるを得ないのです」(牧野事業部長)
通りいっぺんの受け答えではなく、応募者の資質や潜在力にまで踏み込んだ選考となるわけだ。学生や保護者としては、このような力を磨く場の提供を大学に求めることになる。
こうした状況を踏まえ、キャリア支援に力を入れる大学では、1年次からキャリアに関する学修を取り入れるなど、取り組みを早めている。就職への意識を高め、自分がどんな仕事をしたいのか、どんな職に適性があるのかを早めに見極められるようサポートしているのである。
「就業観や将来の方向性に早くから気づくことで、大学での学びに対する意識も違ってくるのではないでしょうか」と、牧野事業部長も評価する。