2020年東京五輪開催の決定を聞いたアルバイト採用担当者は喜びとともに焦りを感じたに違いない。五輪特需が発生すれば店舗間で店員の奪い合いが激化する。今でさえ人手不足なのに「これで当分、人(アルバイト)が採れない状況が続く……」。
長く続く不況のせいで正社員募集には人材が集まるが、学生が主力となるアルバイト募集には人が集まらず、店舗が完成し什器も搬入したのに新規開店を延期するケースも目立っている。なぜ人が集まらないのか?
応募は来るのに採用できない
採用ソリューショングループ
平井夢宇氏
人材採用情報を専門に手掛けるリクルートジョブズの平井夢宇氏は「働きたいというニーズはあるのに、企業側の採用現場に問題があって、きちんと採用まで結び付けられないケースが多く見受けられます」と指摘する。
多くの企業はアルバイトの募集・面接・採用を店舗の店長に任せている。一般的な流れでは、求人媒体に求人広告を掲載し、それを見た応募者が店舗に電話を掛け、日取りを決めて面接、採用の可否を判断する。「ところが店長不在時に応募者から電話が掛かってきた場合、取り次がれずに放置されることも珍しくないんです」(平井氏)。
決してわざと放置しているわけではなく、店は常に忙しく接客優先のため、連絡メモが紛れてしまうことが日常茶飯事。他にも、折り返すべき電話をうっかり忘れてしまう、応募者と忙しい店長との間で面接設定が思うように進まない、応募者に電話で連絡を取ろうとしてもなかなかつながらない、などで採用につなげられないことが多いという。
結局、煩雑な手間が理由で思うようにアルバイトが採用できず、店はコストの掛かる求人情報を出し続けてしまう。さらに本部も採用業務を店舗任せにしていて実態を把握しきれない。
採用できないのは、店の業務に問題があるのか、単に採用すべき人がいなかったのか、応募条件が悪いのか等、問題が分析されることなく、無駄に発生し続ける採用コストも店舗経費の一部として処理される。ここで一連の採用業務は「ブラックボックス化」してしまうのだ。