働き続けやすい
環境づくりが大切

 福利厚生についても、単に社員をリフレッシュさせるだけでなく、社員同士のコミュニケーション充実を図り、組織の連帯感を強めるための制度として活用する企業が増えている。

「福利厚生は、メニューさえ整えればいいというものではなく、そこになんらかのメッセージが込められていることが望ましい。例えば米国のある企業は、『社員とは家族のようでありたい』という考え方の下、社員が死亡した場合には、その子どもが独立するまで給与の半額を支給し続ける死亡保障制度を導入しています。成果を厳しく要求されながらも、困ったときには、親が子どもに救いの手を差し伸べるように助けてもらえるという安心感によって帰属意識が高まるわけです」

 優秀な社員を長くつなぎ止めるためには、帰属意識を高めるだけでなく、働き続けやすい制度を整えることも重要だ。

「出産・育児休暇制度や一時退職者の再雇用制度などは、かなり導入が進んできましたが、介護支援制度の導入については、まだまだ遅れている企業が多いように見受けられます。50代以上の少なからぬ人材が親の介護で悩んでおり、今後65歳までの雇用延長によって年老いた親を介護するシニア人材がますます増えるわけですから、人材確保を重視するのなら介護支援制度の導入は避けては通れない問題となるでしょう」

メンタルヘルス不調にも
十分な対応を

 自己啓発や能力開発プログラムと人事評価を連動させることも、人材流出を避けるのに有効だと西久保教授は指摘する。

「例えば、一定の資格や技能を取得すれば、それが社内の適職への異動・昇進につながるといった制度を取り入れるのも方法です。社内におけるキャリアアップの道筋が明確になるので、せっかく育てた社員が転職して、与えた能力を持ち逃げされるリスクを抑えることができます」

 一方で、過酷な労働による健康障害、ストレスや職場内での人間関係などを原因とするメンタル不調に陥る社員は依然として高水準である。「社員が病気で長期離脱したり、退職に追い込まれたりすることも、貴重な人材を失う大きなリスクです。予防や治療のための制度をきちんと整えておくことが望ましいでしょう」と西久保教授は語る。

 優秀な人材の確保・育成だけでなく、介護やメンタル不調などへの対応も迫られる現在。従来の“横並び”とは違った、戦略的な人事制度の構築が、経営者に求められている。