トータルマネジメントと
長寿命化がポイントに

 下水道の長寿命化には、性能診断、補修、維持管理のサイクルを回していくことが必要だ。「必要箇所にフォーカスしたメリハリある補修で、平均寿命の長期化を図るのが現実的です」と、滝沢教授も指摘する。その前提となるのが下水管の現状の正確な診断だが、「わが国のロボット技術などを生かした精緻な診断システムは、世界トップレベルといっていいいでしょう」。

 劣化した下水管の補修では、独自技術・工法の開発が進む。「わが国の下水道は、大口径管ほど幹線道路に埋設されることが多くなっています。従来工法では、道路交通や下水流路を遮断しなければなりませんが、これらが不要な新工法が開発されています」と、滝沢教授は語る。

 そして注目されるのが、PPP(官民連携)による下水道システムのトータルマネジメントだ。「下水道を効率的に運営するには、イニシャルコストの合理化に加えて、ランニングコストの見直しが不可欠です。公営や自治体直轄による従来型の運営ではなく、PPPによってライフサイクルコストの抑制を期待できます」。単年度、部分ごとの発注に伴う無駄を削減し、長期的な視野から効率的な社会インフラサービスを提供しようとの機運が高まっているのだ。

 折しも今年9月、国土交通省から「ストックマネジメント手法を踏まえた下水道長寿命化計画策定に関する手引き(案)」が発表された。ライフサイクルコストを抑制する下水道施設マネジメントの手法と流路管の最新の更生工法などが紹介され、各自治体での積極活用が見込まれる。財政面の課題も、PFI(民間事業化)の環境整備が進みつつあり、官民でSPC(特別目的会社)を設立してトータルマネジメントを委託する取り組みが活発化しそうだ。

 滝沢教授は、「国内での水インフラのマネジメントノウハウの蓄積が、大きなビジネスチャンスを生み出すでしょう」と期待を寄せる。すでに欧米で成果を挙げている企業もあり、「早晩、アジアなどの新興国も同様の課題に直面します。いち早く解決策を手にしているわれわれに、大きなアドバンテージがあることは間違いありません」。